中心部に高純度チタンが製造できた=東大の岡部教授提供

東京大学の岡部徹教授らの研究チームは、不純物の酸素が少ない金属チタンを約10分の1の時間で製造する技術を開発した。チタンの酸化物を加熱して溶かし、アルミニウムなどの金属を使って酸素を除去する。軽くて丈夫な金属チタンの用途拡大につながる。

チタンは地殻の中で9番目に多く存在する。天然では酸素と結合した酸化物の形を取るため、金属のチタンにするには酸素を除去する必要がある。鉄に比べて軽くて丈夫なために航空機の材料などに使う。だが高純度の金属チタンは安く大量生産するのが難しく、高価な製品へ使うのが一般的だった。

新技術はチタンの酸化物から直接、金属チタンを製造できる。チタンの酸化物を高温で溶かし、アルミニウムなどの金属で酸素を除去する。さらにレアアース(希土類)のイットリウムとそのフッ化物などを使い、酸素濃度を一層下げる。従来の金属チタンに比べて質量当たりの酸素濃度を半分以下にでき、チタンの純度を高められる。

また従来法はチタンの酸化物を塩化物にしてから酸素を除去するが、工程が複雑で時間がかかる。新技術は製造工程を簡略化でき、所要時間を短縮できる。岡部教授は「原理的には金属チタンの製造速度を10倍以上にできる」と話す。

新技術はチタンのリサイクルにも利用できる。チタンは製品に加工する過程などで不純物となる酸素を含むスクラップが発生する。ただスクラップ中の酸素を取り除くのが難しく、リサイクルには限界があった。新技術を使ったリサイクルの拡大で金属チタンの製造コストが下がれば、現在は一部の用途に限られる自動車向けなどで利用が広がる。

今後は東邦チタニウムなどと共同研究を進め、製造設備の大型化を進めて実用化を目指す。

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