国内の学会連合の有志が、大学や研究機関の研究者に配る資金「科学研究費助成事業(科研費)」の倍増を求める署名活動を始めた。研究費不足が一因と指摘されている日本の研究力の低下に歯止めをかけることを目指すという。
署名活動は、生物科学学会連合や日本化学連合など国内の12の学会連合が中心となって呼び掛けている。8日時点で国内の167の学会も賛同する。所属会員数は延べ約208万人に上る。署名活動と合わせて、科研費の増額を求める要望書も国に提出する予定だ。
科研費は人文・社会科学から自然科学まですべての分野を対象に助成する文部科学省の研究費だ。研究者が応募し、日本学術振興会が審査して助成を決める。公募によって優れた研究を選んで配分する競争的資金の中で最大規模で、2023年度は約9万件の応募があり、うち27.5%が採択された。
学会連合有志は、科研費が04年以降、実質的に大きく目減りしていると訴える。科研費の年間予算は約2400億円で10年以上横ばいが続くが、国立大学への運営費交付金は減少傾向にある。
運営費交付金で賄われるべき経費を科研費で補おうと、応募件数が急増し、研究費の獲得競争が激化しているという。その結果、研究課題1件あたりの配分額が減少した。物価高や円安などを考慮すると、科研費の実質の平均配分額は直近10年で半減したと指摘する。研究資材や学術誌への論文掲載料の高騰も追い打ちをかける。
要望書では安定的に研究できる環境を整え、国際競争力を回復するためには「現状の2倍、4800億円以上が必要」と試算する。
8日に記者会見した生物科学学会連合の東原和成代表は「基礎研究と学生に対する教育が難しい状況になっている」と窮状を訴えた。後藤由季子副代表は「科研費の増額はイノベーションの芽を作り、産業界や次世代の育成に直結する」と強調し、理解を求めた。
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