サグリはベトナム拠点の人員など、海外事業にかかわる社員を増やす

衛星データを活用して農家を支援するサービスを提供するサグリ(兵庫県丹波市)は8日、島津製作所のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などから約10億円を調達したと発表した。海外事業に携わる人員を20〜30人に倍増し、東南アジアやインドでのビジネスを強化する。農地をマッチングする新サービスにも力を入れていく計画だ。

サグリは公開されている衛星データを活用して農地を分析するサービスを手がける。例えば、衛星データから農地に植えた作物の生育状況を確認できるアプリ「サグリ」や、耕作放棄地となっている可能性を自動で判定するサービス「アクタバ」などを提供してきた。

サグリが実施した第三者割当増資を島津のCVCのほか、キリンホールディングスやヤマトホールディングスのCVC、VCのスパークルやSMBCベンチャーキャピタルなどが引き受けた。サグリは各事業会社と協業も検討する。

今後、特に成長が期待できる事業は2つだ。1つ目は営農支援のアプリを通じた脱炭素の取り組みだ。衛星データから土壌の状態を分析できるため、導入する農家は必要な分だけ肥料を散布できる。肥料を通じて発生する温暖化ガス「亜酸化窒素」の削減につながる。

この削減量を二酸化炭素(CO2)排出量取引に使う「カーボンクレジット」とすることで、農家は脱炭素を進める企業などに売却できる。サグリの坪井俊輔・最高経営責任者(CEO)は「脱炭素ビジネスは全産業を巻き込めるのが強みだ」と指摘する。

2つ目が、4月に開始した新事業の農地マッチングサービス「ニナタバ」だ。農地を手放したい農家と、農地を集約して拡大したい農業法人などをつなげることで成果報酬を受け取る。ニナタバは国内で先行するが、海外でも展開できると見込む。

サグリは4月、農地を手放したい農家と農地を拡大したい法人などをマッチングするサービスを開始した

海外事業の強化で一段の成長につなげる。売上高に占める海外比率も2023年5月期の5%程度から数年後には5割近くまで増えると見込む。

サグリは18年設立のスタートアップだ。別会社で教育事業などを手掛けていた坪井氏が、農業関連のサービスを開始しようと農家への調査などを実施するため丹波市に本社を置いた。現在は東京や海外各地にもオフィスを設けているが「しっかりと地元に貢献したい」(坪井CEO)としている。

兵庫県に本社を置く企業ではAcall(アコール、神戸市)が23年に借り入れを含めてVCなどから13億円の調達を発表した例はあるが、関西のスタートアップで一度に10億円を調達するケースは珍しい。スタートアップ情報データベースのINITIALによると、関西2府4県の23年の資金調達額は511億円と、東京都の12分の1にとどまった。

(仲井成志)

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