8日午後4時43分ごろに日向灘で発生したマグニチュード(M)7.1の地震の直後に、南海トラフ地震の想定震源域の東側の東海地方で微弱な「スロー地震」が発生したことがわかった。スロー地震は2011年の東日本大震災などの巨大地震の前にも観測された。専門家は「今のところ大地震に直結する可能性は低いが、大規模な現象になって次の地震の引き金にならないか注視が必要だ」と指摘する。

気象庁などの観測によると日向灘で地震が発生した直後の午後5時ごろから、三重県や愛知県の地下で「スロー地震」が発生したことがわかった。スロー地震はプレート同士が接する部分で揺れをほとんど伴わずに発生する。

通常、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込むことで、2枚のプレート同士が接する場所の周辺には大きなひずみがたまる。大きな地震は陸側プレートが跳ね上がり、このひずみを解消する。一方でスロー地震は接する面がずるずると滑ることで発生する。そのために揺れを感じることはほとんどない。

東京大学地震研究所の小原一成教授は「大地震が起きた後に遠隔地でスロー地震が発生することはよくある」と指摘する。小原教授によると、05年のスマトラ沖地震でも南海トラフでスロー地震を観測した。

ただ、過去の大地震の前にスロー地震が観測された例も少なくない。11年3月に発生した東日本大震災でも、発生の約1カ月前に震源周辺でスロー地震が起き、その後大きな地震が発生した。

通常の地震と比べて放出するエネルギーは極めて小さいが、ひずみを近隣の領域に与える。そのため大地震を引き起こす可能性が指摘されている指摘されている。

17〜18年にメキシコで発生した複数の大地震では、ひとつ目の地震が発生した後で起きたスロー地震が、別の地震を誘発した可能性があると京都大学の研究チームが指摘している。この事例では17年9月に発生したモーメントマグニチュード(国際的な地震指標、Mw)8.2の地震によって通常と異なるスロー地震が発生し、9月のMw7.1の地震や18年2月のMw7.2の地震を誘発したという。

日向灘の地震で倒壊した家屋の解体作業を進める関係者=9日午前、鹿児島県大崎町

小原教授は「今回観測されたスロー地震は非常に微弱だが、今後大規模なスロー地震に成長する可能性はゼロではない。そうなれば大きな地震の引き金になる恐れもあり、注視が必要だ」と指摘する。

過去に南海トラフ海域では100〜200年の間隔で大地震が発生している。前回の昭和東南海地震(1944年)や昭和南海地震(46年)から約80年が経過した。政府の地震調査研究推進本部は、今後30年以内に南海トラフでM8〜9の巨大地震が発生する確率を70〜80%と試算している。

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