米ミネソタ州での樹木調査の様子(米国農務省森林局提供)

東京大学や森林総合研究所が加わる日米欧などの研究チームは、地球全体の森林が吸収する炭素の量が30年前からほぼ変わっていないことを突き止めた。熱帯地方などで森林の破壊が進む一方で植林や森林再生などの効果が出て、吸収量を維持した。だが将来は気候変動が招く山火事や干ばつが吸収量を押し下げる可能性がある。

研究には日米欧とカナダ、中国、インドネシア、オーストラリアの11カ国が加わった。各国の統計や観測データから樹木が蓄えたり森林の土壌が固定したりする炭素の量の変化を、1990年から2019年までの30年分計算した。成果は英科学誌ネイチャーに掲載された。

計算の結果、1990年代と2000年代のそれぞれ10年間で森林が蓄えた炭素の量を1年間の平均にならすと、ともに約36億トンでほぼ一定だった。10年代も約35億トンで微減の範囲に収まった。

一方、森林の種類ごとに吸収量は大きく異なった。違法伐採などによる森林破壊が深刻な熱帯の原生林では30年間で31%減り、ロシアや北米、北欧などの寒冷地の森林では36%減少した。一方で中国が国家政策で大規模な植林を進めた影響が出た温帯では30年間で30%増え、熱帯でも再生した森林は29%増加して寒冷地などの減少分をまかなった。

研究では1990年から30年間で森林が吸収した炭素は、同時期に化石燃料の使用で出た量の約半分に相当すると分かった。だが今後は若い森林が老いたり、森林の破壊が進んだりして炭素の吸収量が減る。

一方で、森林破壊は土壌が蓄えた二酸化炭素が大気中に出ることなどで炭素の放出も招く。特に状況が深刻な熱帯では吸収した分の3分の2に相当する大量の炭素が森林破壊で出ていることも分かった。寒冷地でも気候変動に伴い山火事などの影響が強まると予測する。

研究チームは今後も森林の伐採制限や回復促進策のほか、新たな土地管理の政策が必要になると指摘した。チームに加わった森林総研の橋本昌司主任研究員(東大准教授を兼務)は「欧州では森林保護で温暖化ガスを削減しながら木材を活用する『クライメートスマート』という概念が出ており、日本もあり方を考える必要がある」と話した。

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