産業技術総合研究所の赤木祐香研究員らの研究グループは、レーザー光を使って神経細胞を壊さずに観察するシステムを開発した。従来は観察用試薬などを用いるため細胞にダメージを与える。再生医療で用いる細胞の品質管理などへの応用を目指す。
細胞を観察する場合、ガラス電極を挿したり蛍光物質を入れたりするのが一般的だ。ただ細胞にダメージを与えるため、自然な状態を調べるのは難しい。計測に時間がかかったり、実験者の技術的な習熟度によって差が出たりする場合もある。
研究グループは、レーザー光を当てて出てきた光を調べる「ラマン分光法」を応用し、独自にシステムを開発した。レーザー光をらせん状にくまなく照射し、細胞の散乱光を検出できる。細胞は刺激が与えられると物理的、化学的な状態が変わるため、散乱光が変化する。検出した散乱光と刺激の情報をコンピューターに機械学習で学ばせ、刺激の違いによる細胞の状態を95%以上の精度で分類できた。
独自システムはレーザーの照射時間が短いため、細胞への熱ダメージを小さくして細胞全体の情報を得られる。神経細胞以外の細胞にも利用できるという。
臨床で使用する細胞の機能を損なわずに評価でき、再生医療で使用される細胞シートなどの最終製品の品質管理に応用が期待できる。現在の品質評価は培養過程の細胞から一部を採取して実施している。細胞にダメージを与えてしまうため、最終製品自体の評価は難しかった。今後はシステムの小型化や自動化、同時に観察できる検体の数を増やすなどの改良を進めるという。
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