第171回芥川賞と直木賞は、7月の選考会で、芥川賞に
▽朝比奈秋さんの「サンショウウオの四十九日」と
▽松永K三蔵さんの「バリ山行」の2作が
直木賞には
▽一穂ミチさんの「ツミデミック」が選ばれました。

23日は東京都内で賞の贈呈式が開かれ、受賞した3人に記念品と賞金の目録が贈られたあと、それぞれあいさつしました。

芥川賞 朝比奈秋さん「かすかな喜びが体の底からわいてくる」

このうち、朝比奈さんは「物語を書くと没頭して、物語自体が元からどこかにあって完全に自立しているように感じてしまうので、名誉ある賞を受賞しても光栄さが一瞬で通り過ぎる状態でした。ですが祝福されているのは僕ではなく小説自体や登場人物と気付くと、自分がなにものでもなく、いち人間として書いたのだと実感し、かすかな喜びが体の底からわいてきます」と思いを語りました。

芥川賞 松永K三蔵さん「父が受賞を誰よりも喜んでいる」

また、松永さんは「14歳のとき母にすすめられたドストエフスキーの『罪と罰』を読み、自分の『罪と罰』を書こうと思い、小説家を志しました。浪人時代には、父から『芥川賞を取っても食べてはいけないぞ』と言われました。まさか自分が芥川賞などと大それたことは考えておらずびっくりしましたが、万が一にも芥川賞を取ると想像したのは父で、受賞を誰よりも喜んでいます」と述べたほか、自身のペンネームについて、「三蔵は祖父の名前です。ミドルネームのKは家族の名前で一番多く、父のイニシャルでもあるKです」と明かし、家族への思いを語っていました。

直木賞 一穂ミチさん「ここに立たせてくれたこと 誇りに思う」

そして一穂さんは、小学生のときに衝撃を受けたテレビゲームの「ドラゴンクエスト3」に登場する「なにゆえ もがきいきるのか?」というセリフをあげ、「この大きな問いに自分の生身の人生一つではなかなか打ち返せませんが、物語の中には答えと選択がありました。たくさんの小説家が紡いできた答えに私は何度も救われ、背中を押されてきました。私もその問いに小説という形で打ち返してみたくて書き始めたような気がしています。編集者や友人、両親、皆さんがここに立たせてくれたことを誇りに思います」と感謝のことばを述べました。

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