コアラやオランウータン、コモドドラゴン――。各国が自国を象徴する動物を外交に生かそうとする動きがある。憎めない存在を「友好の架け橋」にしようとする取り組みだが、反発も受けている。

 コアラを抱っこして、にっこり。日本の岸田文雄首相が2022年10月、オーストラリア西部パースを訪問した際、アルバニージー首相と並んで記念写真が撮影された。安全保障分野の連携強化などが議題となるなか、現地メディアは「ほのぼのとしたひとときとなった」と報じた。

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 豪州がコアラを外交の舞台に登場させたのはこの時だけではない。2014年に同国で開催した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、豪州のアボット首相(当時)とロシアのプーチン大統領が並んでコアラを抱いて写真におさまる一幕があった。

 当時、豪州とロシアはウクライナでの航空機撃墜事件をめぐり、緊張関係にあった。死亡した乗客乗員298人のうち、38人が豪州を故郷とする人だったことから、豪政府はロシア政府の対応を批判していた。コアラがひとときの「ほっこり」演出に一役買った形だ。

 「『オランウータン外交』を導入すれば、マレーシアの生物多様性の保全の取り組みを世界に証明できる」とうたったのは、マレーシアのプランテーション産業・商品相、ジョハリ・アブドゥル・ガニ氏だ。5月、自身のX(旧ツイッター)に投稿した。

 ジョハリ氏のねらいは、マレーシアの主力産品、パーム油へのマイナスイメージの払拭(ふっしょく)だ。パーム油の原料となるアブラヤシの栽培は、オランウータンがすむボルネオ島の熱帯雨林を破壊するとして環境保護団体から批判を受けており、主要取引先の一つである欧州も「自然破壊の要因」だとして輸入規制を強めている。

 ジョハリ氏はオランウータンを通じて、自国が環境保護に取り組んでいる姿勢をアピールしたかったようだ。ジョハリ氏は、中国が関係を深めたい相手国にパンダを貸し出す「パンダ外交」に倣ったものだ、ともSNSに投稿した。

 しかし、世界自然保護基金(WWF)マレーシアは「オランウータン保護への関与を示す最良の方法は、生息地の自然林を守ることだ」と主張。現地メディアによると、「オランウータン外交」への批判が相次いだことから、ジョハリ氏は今月に入り、見直す方針を示している。

 インドネシアはシンガポールやタイなど、近隣の東南アジア諸国を中心に世界最大級のトカゲとして知られる固有種「コモドドラゴン」を贈り、友好を深めてきた。

 現地メディアによると、1990年代を最後にしばらく実現していないという。(ジャカルタ=半田尚子)

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