エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)㊧と司法省のジョナサン・カンター反トラスト局長=AP

【シリコンバレー=渡辺直樹】米司法省が米半導体大手エヌビディアの強制調査に乗り出したことが3日、明らかになった。反トラスト法(独占禁止法)による提訴を視野に、証拠を集めるための召喚状を送ったと米ブルームバーグ通信が報じた。

エヌビディアはAIの開発・動作に使う半導体で1強状態にある。他社の供給を阻む反競争的な行為があったかどうかが焦点となる。

エヌビディアは半導体そのものだけでなく、AI開発に最適なソフトを提供している。半導体とソフトと抱き合わせで使う顧客らに対し、供給面や価格設定で優遇していないかなどを同省が調べているという。

米国では11月に大統領選挙を控える。政権末期にも関わらず競争当局が調査を始める背景には、在任中に実績を残すとともに、新政権下でも巨大テック企業をけん制する路線を継続させようとする思惑がある。

英調査会社オムディアによると、エヌビディアの2023年のデータセンター向けAI半導体のシェアは約8割に達する。

米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)など競合が対抗製品を投入しているが、エヌビディアの先行優位は続いている。AI開発企業は実質的に同社の製品が不可欠となっている。

司法省は調査について「ノーコメント」と話した。

エヌビディアの広報担当者は事実関係には言及せず、「比較評価や顧客価値を反映し、エヌビディアは実力で勝利している。顧客は最適なソリューションを自由に選ぶことができる」と述べた。

独禁当局である司法省は米連邦取引委員会(FTC)と並び、巨大テクノロジー企業への監視を強めている。司法省は米グーグルの独占をめぐる裁判で8月上旬に地裁で一審勝訴を勝ち取った。アップルに対しても3月に独禁法違反で提訴に踏み切った。

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