スタートアップ(新興企業)が自社の強みや有望性などを発表で競い合う世界的なコンテスト「スタートアップワールドカップ」(SWC)の九州予選が8月27日、熊本市中央区の熊本城ホールで開かれた。書類審査を通過した11社のうち、熊本大学発の創薬企業「StapleBio(ステープルバイオ)」(本社・熊本市中央区)が1位となった。
同社は、東京、京都両予選で勝ち抜いた2社とともに、日本代表として、10月2~4日にアメリカ・サンフランシスコで開かれる決勝大会に進出する。優勝すれば100万ドル(約1億4千万円)の出資を受けることができる。
SWCはアメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くベンチャーキャピタル(投資会社)の「ペガサス・テック・ベンチャーズ」が主催し、今回が6回目。コンテストを通じて有望な企業を「発掘」し、提携を望む大企業につなぐことなども狙っている。世界70以上の地域で予選が開かれ、九州での予選開催は初めて。
SWCでは、出場企業の登壇者が質疑も含め5分半で自社の事業などを紹介。審査員の採点と、来場者やオンラインで視聴している人たちによるX(旧ツイッター)での投票を総合して順位が決まる仕組み。
1位となったStapleBioは、独自の新技術を使い、多くの希少疾患のような治療方法が確立されていない病気の治療薬を開発している。新型コロナウイルスのワクチンでも注目された「核酸医薬」の分野だ。同社によると、病気の原因となっているメッセンジャーRNA(mRNA)に、独自に開発した「Staple核酸」が働きかける手法を用いている。
経営しているのは、この研究を続けてきた熊本大准教授(大学院先端科学研究部・医工学部門)の勝田陽介氏。元製薬会社員と2021年11月に起業し、取締役CSO(最高科学責任者)を務めている。
希少疾患の子ども「創薬で救う」
勝田氏はこの日のプレゼンで、「(希少疾患は)約7千種類、患者の数は約3億人。その半数が子どもで、多くが命に関わる病気ですが、大手製薬会社は開発コストを回収するのが少し難しいことから、治療薬はほとんどない」と現状を説明。その上で自社の創薬スピードが早いことなどの優位性をアピールし、「いつ訪れるかわからない死への恐怖と闘いながら、それでも生きたいと思っている子どもたちが全世界にたくさんいる」と事業の重要性を訴えた。
1位の発表後、勝田氏は「希少疾患は日本だけではなく、世界にいっぱい患者さんがいるので、その現状と、それに対して薬を作ろうとしている会社があることを、世界の皆さんに知っていただければいいなと思います」と決勝大会への意気込みを語った。
また、コンテストを観戦した大西一史・熊本市長は「熊本の企業が1位に選ばれて誇らしい。(希少疾患の問題を)何とか自分たちの力で解決をしたいという情熱が勝利につながったと思います」と喜んだ。(関根和弘)
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〈おことわり〉当初配信した記事で、創薬企業「StapleBio」取締役の勝田陽介・熊本大学准教授の肩書を「CSO(最高戦略責任者)」としたのは「CSO(最高科学責任者)」の誤りでした。記事を修正しました。
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