海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」=静岡市の清水港で2024年9月5日午前9時2分、垂水友里香撮影

 東日本大震災を引き起こした断層は、再び大地震を起こす力をどのくらい回復しているのか――。海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の地球深部探査船「ちきゅう」が6日、静岡県の清水港から調査地の宮城県沖約200キロに向けて出航した。3カ月かけて、日本海溝の水深約7000メートルの海底下をさらに約950メートル掘削し、未曽有の大地震が残した謎に迫る。

 今回の航海は、巨大地震や津波のメカニズムを探る国際研究プロジェクトの一環。日米欧など10カ国から地質学や地震学の研究者ら延べ50人以上が乗船した。総運航費は39億円。同じエリアの掘削調査は震災1年後の2012年以来12年ぶりとなる。

 東日本大震災では、従来地震が起きないと考えられていたプレート境界の浅い場所で、50メートルを超える滑りが発生し、巨大な地震や津波に発展したことが分かっている。

 12年の調査では、この浅い場所を掘削。地震前に蓄積されていたエネルギーがほぼすべて解放されたことや、粘土質の土壌に含まれた水が断層面の摩擦熱で膨張し、滑りを加速させたことなどを突き止めた。

再びひずみを蓄積しているか

 一方で、この浅い場所がひずみをため込みやすい「固着域」かどうかは謎のままだった。もし固着域であれば、今後、プレートの動く力で生じるひずみがこの浅い場所にも蓄積し、限界を超えた時に一気に動くことで巨大地震と津波を引き起こす恐れがある。

 今回の調査掘削では、12年の掘削地に近い、震災で大きな滑りが発生したプレート境界浅部の深さ約950メートルと、陸のプレートに沈み込む太平洋プレートの入り口の深さ約450メートルの2カ所を掘ると同時に地質の性質を計測するほか、試料採取を試みる。試料は船内の実験室で、2班に分かれた研究者たちが24時間態勢で解析する。

 12年の調査にも参加したプロジェクト共同首席代表の氏家恒太郎・筑波大教授(構造地質学)は「地震から13年を経て、断層が固着し始めているのかどうかを知る絶好の機会だ。なぜ地震が巨大化するのか明らかにしたい」と意気込んでいる。【垂水友里香】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。