【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)時事】独創的でユーモラスな研究を表彰する「イグ・ノーベル賞」の今年の授賞式が12日、米東部ボストン近郊のマサチューセッツ工科大で行われ、哺乳類が肛門を通じて腸で呼吸できることを発見した東京医科歯科大の武部貴則教授(37)らのグループが「生理学賞」を受賞した。日本人の受賞は18年連続。

教授らの研究は、新型コロナウイルス感染などで呼吸不全に陥った患者に対する症状緩和策につながると期待されている。

専門の再生医学の観点から肺の研究を始めた武部教授らは、ドジョウの呼吸法に注目。ドジョウは普段はえら呼吸だが、低酸素環境下では酸素を腸で取り込んで補充する。

肺機能が低下した人間にもこの「腸呼吸」を応用できないかと考え、マウスやブタで実験。肛門から酸素ガスや酸素を豊富に溶かした液体を供給したところ、血中の酸素量が増加し、生存率が改善することを確認した。

教授らは、この手法を「腸換気法」と名付けて2021年に発表。現在は、患者の肛門にかん腸の要領で酸素を投与する医療機器の治験を進めており、28年に日本で、30年に米国での製品化を目指している。

呼吸不全の患者には従来、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が使用されるが、身体的負担が大きく、扱いも難しい。武部教授は時事通信の取材に、腸換気法は超未熟児にも活用できると指摘。今回の受賞を通じて「まだ広く受け入れられていない技術だが、楽しみながら知ってもらえればありがたい」と話した。

授賞式では共同受賞者の岡部亮医師(45)、名古屋大の芳川豊史教授(52)らとドジョウの帽子をかぶって研究を再現。酸素に見立てた風船をお尻にあてがって説明すると、会場は笑いと拍手に包まれた。

12日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのマサチューセッツ工科大で開かれたイグ・ノーベル賞授賞式で、生理学賞を受賞した(演壇から右に)武部貴則教授、芳川豊史教授、岡部亮医師ら研究チーム

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