国土交通省は17日、2024年の基準地価を公表した。住宅地や商業地といった全用途の全国平均は前年比で1.4%上昇し、3年連続でプラスとなった。上昇率が拡大した三大都市圏では再開発や低金利下での堅調な住宅需要が地価を押し上げた。訪日外国人客の増加などで地方でも波及効果がみられる。
7月1日時点の地価動向を調べた。用途別では住宅地の全国平均が前年比で0.9%伸びた。商業地も2.4%上昇し、ともに3年連続でプラスとなった。全用途の全国平均の上昇率は1991年の3.1%以来の伸び幅となる。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏で上昇が目立つ。上昇地点の割合をみると、24年は84.4%と2年連続で8割超の地点が上昇した。新型コロナウイルス禍前の19年は58.9%にとどまっていた。24年は東京圏の商業地に限れば、94.5%が上昇した。
地価が最も高かった地点は19年連続で東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」だった。1平方メートル当たりの地価は4210万円で前年比で5.0%伸びた。
全用途の平均上昇率は東京圏が4.6%、大阪圏と名古屋圏はともに2.9%だった。相次ぐ再開発が商業地の地価を押し上げた。東京の渋谷駅近くの一地点では上昇率が23年の4.8%から18.1%に拡大した。
大阪でも大規模な再開発が進む。大阪駅北側では24年9月に「グラングリーン大阪」の複合ビルや公園などが先行開業した。周辺の大型複合施設「グランフロント大阪」南館の商業地は24年も3.9%上昇し、価格は大阪圏で最も高かった。
大阪駅西側では24年に再開発が相次ぎ、オフィスや商業施設の床面積が増えた。三鬼商事によると、大阪ビジネス地区のオフィス空室率は8月に4.19%で「オフィス需要が堅調で、空室率は低く抑えられている」という。
日銀は7月に政策金利を引き上げたものの、引き続き緩和的な金融環境が続くと見込まれる。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)の大東雄人氏は「金利水準の高い欧米と比べて、日本市場は相対的に魅力が高い状況が続く」とみる。
JLLによると、日本の不動産投資額は24年1〜6月期でおよそ2.6兆円と前年同期と比べて1.2倍に拡大した。国内勢がオフィスやホテルなどに積極投資を続けていることに加え、海外からの投資額も前年並みの水準で推移する。
住宅地の上昇も続き、東京の飯田橋駅に近い新宿区の一地点では17.1%のプラスだった。マンションなどの住宅需要は都心部を中心に堅調だ。大和ハウス工業マンション事業本部の角田卓也部長は「富裕層やパワーカップルなどがけん引している」と語る。
比較的所得に余裕がある層では購入意欲が続く一方、利便性などで劣る物件については売れ行きが鈍いケースも出てきている。不動産経済研究所によると東京23区の新築マンションの平均販売価格は23年に初めて1億円を上回り、買い手も慎重姿勢を強める。
【北海道・東北の基準地価】
- ・北海道、全国平均下回る 札幌近郊一服
- ・東北、宮城県や福島県で商業地の上昇幅拡大
- 【関東・山梨の基準地価】
- ・北関東、群馬の商業地32年ぶり上昇 茨城伸び続く
- ・埼玉県、住宅地・商業地とも3年連続上昇
- ・東京都の商業地8.4%上昇 浅草などけん引
- ・千葉県、住宅地上昇率トップは流山 商業は浦安
- ・神奈川県、住宅地3.2%上昇 湘南に勢い
- ・山梨県の下落幅縮小 富士北麓は上昇相次ぐ
- 【中部の基準地価】
- ・静岡県、商業地16年ぶり上昇 熱海市がけん引
- ・北陸3県、石川県の全用途横ばい 地震が影響
- ・新潟県の下落率拡大、長野県はマイナス幅縮小
- ・愛知県、商業地3.6%上昇 名古屋で用地争奪
- 【近畿・中国・四国・九州・沖縄の基準地価】
- ・関西、京都市や大阪市の中心部大きく上昇
- ・中国5県、商業地2年連続上昇 駅前再開発で
- ・四国の下げ幅縮小 都市部や観光地で回復進む
- ・沖縄県、住宅地上昇率1位 福岡は倉庫需要増
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