愛知県飛島村にある三菱重工業の工場で公開されたのは、H2Aロケット50号機の機体です。
H2Aは、20年以上にわたって日本の主力ロケットとして打ち上げられてきましたが、50号機で運用を終え、新型のH3ロケットに完全に移行することになっています。
最後となる50号機の機体は、1段目と2段目に分かれた状態で工場に保管されていて、発射場がある種子島に船で運搬されるのを前に、準備作業が進められています。
運搬後は、種子島宇宙センターで機体が組み立てられ、温室効果ガスを観測する人工衛星を搭載して今年度中に打ち上げられる計画です。
H2Aは打ち上げの成功率がおよそ98%と、世界的に高い水準に達していますが、打ち上げにかかる費用が海外のロケットに比べて割高だとされ課題となってきました。
H2Aの開発に携わってきた三菱重工業の田村篤俊マネージング・エキスパートは「H2Aは、2000年代の主役を担うロケットとして開発され、それに見合う結果を残してきました。今までどおり平常心で、一つ一つ確実に作業して打ち上げを成功させたい」と話していました。
H2Aとは
H2Aロケットは、平成13年から打ち上げられ、日本の主力ロケットとして20年以上にわたって運用されてきました。
全長50メートル余り、機体の直径が4メートルの2段式ロケットで、第1段と第2段のエンジンの燃料には「液体水素」と「液体酸素」が使われています。
またロケットの機体の両脇には固体燃料式の2本の補助ロケットが取り付けられています。
世界的に高い水準の成功率
ことし1月までの48回の打ち上げのうち、失敗したのは平成15年の6号機の1回のみで、成功率はおよそ98%と世界的に高い水準に達しています。
これまでに地球観測衛星や日本版GPS衛星とも呼ばれる準天頂衛星といった実用的な衛星のほか、小惑星のサンプルを地球に持ち帰った「はやぶさ2」など、数多くの人工衛星や探査機を宇宙に運んできました。
打ち上げ業務は民営化 実績あげる
平成19年の13号機からは打ち上げ業務が民営化され、JAXA=宇宙航空研究開発機構から三菱重工業に移管されています。
移管に伴い、国際的な衛星打ち上げビジネスに参入し、カナダの通信放送衛星やイギリスの通信衛星のほか、韓国やUAEの人工衛星の打ち上げを受注して成功させています。
課題は割高とされる費用と技術継承
一方で、およそ100億円の打ち上げ費用がアメリカの「スペースX」が打ち上げる「ファルコン9」など海外のロケットに比べて割高だとされていて、打ち上げビジネスの競争が激しくなるなか、課題となっていました。
またH2Aの開発に関わってきた技術者から次の世代への技術の継承も課題とされ、後継機となるロケットが検討されることになりました。
新型ロケットH3に移行
こうした中で開発されたのが新型のH3ロケットです。
これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、これからの宇宙開発で必要とされる打ち上げ能力の向上とコストダウンを両立させることを目指して開発されました。
特にコスト面では打ち上げ費用をおよそ50億円と、H2Aの半分程度に抑えることを目指しています。
H3ロケットは去年3月の1号機の打ち上げは失敗しましたが、その後、対策を講じた上でことし2月の2号機と7月の3号機の打ち上げに成功しています。
政府の宇宙基本計画の工程表によりますと、H2Aは今年度中に予定されている50号機の打ち上げですべての運用を終え、新型のH3ロケットに完全に移行する計画となっています。
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