熊本大学の石黒啓一郎教授らは、男性側に原因がある不妊に関わる遺伝子を発見した。マウスの実験で、精巣でこの遺伝子が働かないと精子ができなくなることが分かった。男性による不妊症の解明や生殖医療の開発につながる可能性がある。
研究チームはオスの精巣だけで働いている「HSF5」という遺伝子に注目した。ゲノム編集技術でこの遺伝子をなくしたオスのマウスは精子ができる途中で、細胞が死滅するようになった。詳細に解析すると、この遺伝子は精子の元となる精母細胞で働き、精子の頭部や尾部を作る遺伝子などを制御する司令塔として機能することが分かった。
精子は精母細胞が特殊な細胞分裂をして作られる。「減数分裂」と呼ばれ、両親から受け継いだ染色体を半分ずつに分配する。HSF5が働かない場合、減数分裂が途中で止まってしまい、染色体を正確に半分にできなくなっていた。
研究チームはヒトの男性でもHSF5遺伝子には同じような機能があるとみており、ヒトの不妊との関連も調べる考えだ。無精子症や精子形成不全といった男性側に原因がある不妊症の解明を目指し、不妊症に関わる遺伝子が他にも存在するか探索する。
徳島大学との共同研究で、研究成果をまとめた論文が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
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