アゼルバイジャン・バクーで開催中の国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の会場で18日、長野県・諏訪湖の伝統神事「御神渡(おみわた)り」と気候変動をテーマにした映像作品が紹介された。御神渡りは冬に諏訪湖が全面凍結した際に氷に亀裂が入ってせり上がる現象で、近年は気温上昇に伴い出現頻度が激減している。気候変動が日本の伝統文化に与える影響を世界に訴えた。
作品は「御渡(みわた)り/MIWATARI」というタイトルの短編(11分)で、環境NGO「グリーンピース・ジャパン」(東京都)が製作。タイ・バンコクで2月にあった国際映画祭のドキュメンタリー部門で最高賞を受賞し、COP29会場内のタイのパビリオンで紹介された。
周囲16キロの諏訪湖は氷点下10度の日が3日ほど続くと全面結氷するとされる。神事をつかさどる地元の八剱(やつるぎ)神社には、15世紀中ごろから御神渡りの記録を毎年記した古文書が残されている。
結氷せず、御神渡りが現れない年は「明けの海」と呼ばれる。古文書を読み解いた宮坂清宮司(74)によると、明けの海は1451年以降の500年間は10年に1回ほどの頻度だったが、1951年以降は50年間で計22回と急増。今世紀に入ってすでに17回を数え、御神渡りは18年2月を最後に6季連続で現れていない。宮坂さんは「異常気象や温暖化は対岸の火事のように思われがちだが、自然とともに生きてきた日本人の生活にも影響が及んでいる。御神渡りの頻度が減っていることは、自然に寄り添い謙虚であるべきだという警鐘ではないか」と語る。
イベントにビデオメッセージを寄せた長野県諏訪市の金子ゆかり市長は「諏訪湖が凍らなくなったことに地元の人々は寂しさと自然環境への危惧を感じている」と訴えた。参加したタイのNGO職員、ブスサガン・スリヤサンさんは「長期的な視点で気候変動が人々の生活や文化に与える影響を物語る作品。タイでも洪水や極端な暑さで食料生産に影響が出ており、これまでと同じ生活を続けることが困難になっている」と話していた。【バクー山口智】
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