三菱電機は20日、電力制御に用いるパワー半導体の後工程(組み立て・検査)新工場を2026年10月から稼働すると発表した。同社のパワーデバイス製作所(福岡市)で12月1日に着工する。福岡拠点のラインを集約し、自動で資材や製品を搬送するシステムも取り入れて生産効率を高める。
新工場は実験施設の跡地に建設し、5階建てで延べ床面積は2万5270平方メートル。4階で製造に必要な材料を仕分け、2、3階の製造ラインに送り込む。1階は入出荷拠点で、5階は事務所となる。稼働当初は自動車向けの製品を中心に、2つ程度のラインで製造を始める計画だという。投資額はおよそ100億円を見込んでいる。
新棟では、各製造装置の生産計画を自動で立案・最適化するシステムを導入。倉庫からの資材搬入やクリーンルーム内での製品搬送を自動化するほか、搬送と作業のエリアを効率的に分けて配置。既存の福岡の後工程工場に比べ、生産性を20%高める。
同社は今回の新棟建設にあわせ、福岡県から「グリーンアジア国際戦略総合特区」の支援対象に指定された。同特区は環境に配慮した製品・生産拠点づくりを支援する枠組みで、機械や装置を取得する際に法人税の税額控除といった措置を受けられる。
服部誠太郎知事は「自動車のEV化が進む中、半導体需要も高まっている。同社のパワー半導体生産がカーボンニュートラル推進の大きな一歩となるだろう」と期待を込める。
三菱電機はパワー半導体関連の投資を九州で加速している。基板に回路を書き込む前工程では、熊本県菊池市に省エネ性能の高い炭化ケイ素(SiC)の200ミリウエハーに対応した新工場を建設している。
稼働は当初計画から5カ月前倒しして25年11月とした。SiCの150ミリウエハーのラインを増強する同県合志市の拠点と合わせた投資額は1000億円となる。
福岡では45億円を投じて建設した開発・試作棟が22年に稼働している。開発のスピードを速めるため、敷地内に分散していた実験室や試作ライン、試作品の解析・評価機能を集約している。
足元ではパワー半導体を多く用いる電気自動車(EV)の需要が世界的に落ち込んでいるが、三菱電機の竹見政義・上席執行役員は「メガトレンドとしてのパワー半導体の需要拡大は疑いようがない」と述べた。
岩上徹パワーデバイス製作所長は「安定的に供給する体制を整え、グリーントランスフォーメーション(GX)に貢献していきたい」と意気込んだ。
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