絶滅が危惧されている大型淡水魚「イトウ」の国内最大の繁殖地である北海道宗谷地方で、二つの大規模な風力発電事業が計画されている。このうち1事業の最大出力は、原発1基分に相当する計100万キロワット。周辺は国立環境研究所が「イトウに残された最後の聖域」と評価する場所で、地元住民や自然保護団体が懸念を示している。
4日は「みどりの日」。緑豊かな国内最北端の地から、再生可能エネルギー事業と自然環境保全のあり方を考えたい。
北海道にのみ生息
イトウはサケ科の淡水魚で、環境省のレッドリストで絶滅の恐れが2番目に高い「絶滅危惧ⅠB類」に分類されている。かつて東北地方にも生息していたが、1960年代以降は河川改修などで産卵環境が悪化し姿を消した。現在は北海道にのみ生息し、安定した繁殖は猿払(さるふつ)村の猿払川など7水系に限られ、「幻の魚」と呼ばれている。
「生物多様性上、最大級に問題」
この地で風力発電事業を計画するのはユーラスエナジーホールディングス(東京)と、ENEOSリニューアブル・エナジー(同)。ユーラスエナジーは3月、最大160基程度の風車を建設する計画を公表した。ENEOSリニューアブル・エナジーは昨年9月に最大59基の計画を公表している。
昨年9月公表の計画について日本自然保護協会は「生物多様性上、最大級に問題がある」と懸念を示したものの、その後、ほぼ同じ場所に別の大型開発計画が浮上したことになる。【石川勝義】
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