見ごろを迎えている桜をはじめ、梅や桃などの花木を枯死させる外来昆虫「クビアカツヤカミキリ(クビアカ)」の防除対策に取り組む国立研究開発法人森林研究・整備機構「森林総合研究所」(茨城県つくば市)のチームは、栃木県足利市内で昨年実施した振動による防除法の実験結果を発表した。振動で成虫が逃げ出すような明快な成果は確認できなかったが、振動させた木の方が、クビアカの移動距離が少なく静止時間も長い傾向があり、「振動による行動制御の効果を確認できた」とまとめている。
実験しているのは、同所森林昆虫研究領域の衣浦晴生主任研究員(61)、東北支所(盛岡市)の高梨琢磨グループ長(51)らのチーム。生研支援センターの支援を受け、独自の振動発生装置を樹木に装着することによってクビアカの成虫の行動を制御する防除法の確立を目指している。
捕獲したクビアカを使ったこれまでの実験では、振動を感じた成虫が止まったり、動き出したりする行動を確認していた。足利市での実験は自然環境下で飛来したり、試験木で羽化した成虫の行動を調査した。結果は先月30日、仙台市で開かれた日本応用動物昆虫学会の大会で報告した。
報告によると、実験は昨年6~7月、足利市月谷町の駐車場で実施した。周辺のソメイヨシノ4本に東北特殊鋼(宮城県村田町)が製造した振動発生装置を装着。100ヘルツの振動を一定間隔で与える試験木、振動させない対照木2本ずつを2週間おきに入れ替え、目視による確認や1分間隔で記録できる自動カメラで撮影した画像の分析で、出現した成虫の行動を比較した。
その結果、観察個体総数は日によって幅があったが、活動時間は試験木、対照木ともほぼ同じ。個体数も両者に顕著な差はなかったが、自動カメラの撮影画像を比較すると、振動木の方が成虫の滞在時間が長く、移動距離が短い傾向を確認した。観察例は少ないものの、対照木では一定の時間間隔で数メートル動いていた個体があったのに対し、試験木では数十センチしか動かない個体があった。チームは「振動によるフリーズ効果」とみて、振動が成虫の行動を抑制したと評価した。
今後は、振動で成虫を木から追い払ったり、メスの産卵を妨げたり具体的な行動抑制の成否が課題となる。チームは、今年度も同所での実証実験を継続する予定で、高梨グループ長は「今回の結果などから方法を改良して次の試験に臨む」と話している。【太田穣】
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