中国電力が12月の再稼働を目指す島根原発2号機(松江市)をめぐって、島根、鳥取両県の住民4人が運転差し止めを求めた仮処分申請で、広島高裁松江支部(松谷佳樹裁判長)は15日午前10時、決定を出す。
2号機は定期検査に入った2012年1月から運転停止中で、中電は今年12月の再稼働に向け、安全対策工事を進めている。仮に高裁支部が運転を差し止める決定を示した場合、仮処分の決定はすぐに法的拘束力を持つため、今後の司法判断で覆らない限り、再稼働はできなくなる。
島根原発は全国で唯一、県庁所在地にある原発で、松江市中心部から約10キロしか離れていない。30キロ圏内に約45万人が住んでおり、住民側は、原発が人口密集地から離れていることを規定した立地の要件を満たしていないなどと訴えており、高裁支部の判断が注目される。
住民側はこのほか、人口密集地域で地震に伴う原発事故が起きた場合、原子力災害対策指針が定める段階的な避難では住民の被曝(ひばく)は避けられず、屋内に退避しても被曝に対する防護効果はわずかだと主張。指針に基づく避難計画では住民の安全は確保できず、国際的に求められる安全水準を満たしていない原発を運転することが住民の生命・身体が害される「具体的な危険」にあたるとして、運転を止めるよう求めていた。
また、島根原発の近くには震源になりうる活断層があり、耐震設計で想定する最大の揺れ(基準地震動)を決める上で必要な「特別の考慮」を中電がしていないと指摘。基準地震動の想定も低水準で、これを上回る地震が相次いで起きているとも主張した。
一方、中電側は、自然災害や過酷事故対策を義務づけた新規制基準に基づいて基準地震動を決めており、過小ではないと主張。緊急時の避難計画も国の原子力防災会議で了承されており、原発の安全対策は十分で「具体的な危険」はないと反論していた。
島根原発1、2号機をめぐっては、住民らが運転差し止めを求めて1999年に提訴した。松江地裁は2010年、耐震安全性は確保されているなどと判断して住民側の請求を棄却し、二審・広島高裁松江支部で争っている。住民側は、運転停止中の2号機の再稼働が予定されていることを受け、23年3月に運転差し止めの仮処分を申し立てた。(河原田慎一)
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