顧客の在庫整理が進み、NAND市況が改善している(キオクシアの四日市工場)

半導体大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)が15日発表した2024年1〜3月期の連結決算は、最終損益が103億円の黒字(前年同期は1309億円の赤字)と、6四半期ぶりに黒字に転じた。顧客の在庫整理が進み受注が上向いた。市況改善を受け24年内に東京証券取引所への上場を目指す。

売上高にあたる売上収益は31%増の3221億円だった。増収は7四半期ぶり。台湾トレンドフォースによると、長期記憶に使うNANDフラッシュの1〜3月の価格は前四半期比で23〜28%上昇した。低迷していたスマートフォンやパソコン向けの需要が底打ちしたほか、データセンター向けの需要も伸びた。

製品価格の上昇で採算が改善し、営業損益は439億円の黒字(同1714億円の赤字)と6四半期ぶりに黒字となった。キオクシアや韓国サムスン電子、米マイクロン・テクノロジーなどが22年秋からNANDの減産を続けた結果、顧客の在庫が適正な水準に近づいた。

24年3月期連結決算は、最終損益が2437億円の赤字(前の期は1381億円の赤字)と2期連続で赤字を計上した。10〜12月期までの市況悪化の影響を補いきれなかった。キオクシアは生成AI(人工知能)の駆動に欠かせない高性能DRAMを手掛けていないため、23年後半からの特需の恩恵を受けられなかった。

1〜3月期の黒字転換は資金繰りの改善の追い風となりそうだ。NAND一本足のキオクシアは業績改善が遅れ、24年2月には主力の四日市工場の土地を外部売却して賃貸契約に切り替えるなどの資金繰りの対策を進めてきた。

非上場のキオクシアは主に金融機関からの借り入れで資金を調達する。6月末には、大手銀行から借り入れた数千億円の返済期限が迫る。キオクシアは新規株式公開(IPO)によって資本増強と投資拡大を図る戦略を銀行側に示し、融資継続を要請する考えだ。

海外メモリー大手の業績も改善している。韓国SKハイニックスは24年1〜3月期にNAND部門の営業損益が黒字化した。マイクロン幹部も「AIサーバー向けにNANDの需要が急速に高まっている」と話す。

トレンドフォースの予測では、4〜6月の価格は1〜3月と比べ13〜18%上昇する。ただ業界では「24年後半にNAND価格がさらに上昇するとみた一部顧客が、必要以上にメモリーを購入した」(国内半導体商社)という指摘もある。先行きは楽観視できない状況だ。

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