内閣府の生命倫理専門調査会は15日、ヒトの万能細胞などを使って受精卵(胚)に似た胚モデルを作る研究について、国民を対象にした意識調査の結果を公表した。不妊の原因解明などに役立つ可能性があり、約8割が研究の進展に期待を示した。6月以降に本格化する国内での研究規制のあり方に向けた議論の参考にする。
意識調査は、内閣府がコンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニージャパンに委託して行われた。1月19〜21日にインターネット上で実施し、20歳以上の男女計3095人が回答した。iPS細胞と胚性幹細胞(ES細胞)の特徴や倫理上の問題点を事前に説明した上で、今後の研究のあり方など計8問を尋ねた。
iPS細胞とES細胞そのものの理解を問う質問には、75%が「聞いたことがある程度だった」と回答した。「ある程度説明できるほど知っていた」と答えたのは約10%にとどまり、理解が十分に浸透しているとは言えない現状が浮き彫りになった。
現在の国の研究指針は、iPS細胞やES細胞から作った精子や卵子を用いて胚を作製することを禁じている。胚モデルについては、そのものを対象とした研究規制はないが、14日を超える培養は原則認められていない。これらを解禁すれば、ヒトの受精卵が育つ仕組みの理解や不妊の治療法の開発につながると期待されているが、倫理面の課題も残る。
iPS細胞由来の生殖細胞と胚モデルを用いた研究が進展することについて、「強く期待する」「どちらかというと期待する」と回答したのは77.2%に上った。その半数以上が、先天性疾患や不妊の原因解明や治療法開発への期待を理由に挙げていた。
ただ、委員の中には「(約8割が好意的な意見を出しているが)どの程度理解した上で回答しているのか、慎重にみないといけない」と指摘する意見もあった。
一方、「どちらかというと期待しない」「全く期待しない」と回答した人は22.8%にとどまった。そのなかで理由として最も多かったのが「不自然で抵抗感がある」(59.7%、複数選択可)だった。
これらの研究の進め方を全体に3択で尋ねたところ、「研究の実施要件などについて、ある程度国が厳しく規制を行う」が55.2%で最多だった。「研究者に大きな裁量が与えられ、世界の最先端研究を自由に行うことができる」が29.6%、「そもそも研究を認めるべきでない」が15.2%と続いた。
胚モデルをめぐっては、専門調査会傘下の作業部会が4月、一定の規制を設ける必要があるとの検討結果を公表した。6月以降、研究指針の改正も視野に議論が本格化する。ヒトのiPS細胞などからつくった精子と卵子で胚をつくる研究についても今後、容認する方向で議論に入る。
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