2023年11月から今年の2月まで、4か月連続で販売台数ランキングの1位に立ったシエンタ。登場から間もなく2年を迎えるが、毎月コンスタントに約9,000台もの新車が売れていくのは、実力のあるクルマならでは。コンパクトミニバンのイメージが強いシエンタだが、現行型の販売を支えているのは2列シート5人乗りだという。ミニバン「シエンタ」は、どんな使われ方をしているのか。人気の秘密に迫る。

文:佐々木 亘╱写真:ベストカー編集部、トヨタ自動車

■販売好調のシエンタは半分が2列シート車

ポルテやラウム、ファンカーゴやパッソセッテの面影が見える新型シエンタ

 2022年8月に登場した現行型のシエンタ。初期受注から、メーカーの想定を超えた注文量が入っていたのが、2列シート車だった。

 基本的に、小さなボディに3列シートを小気味よく配置するのがシエンタの特徴であった。ただ、現在の売れ方はミニバンというよりもステーションワゴン的な使い方を、ユーザーが求めた結果であろう。

 2列シート車は、先代のマイナーチェンジを機に、FANBASEという追加グレードとして登場した。当時は後発の追加グレードということもあり、そこまで支持を得てはいない。

 しかし、現行型では基本グレードの中に2列5人乗りを配置し、7人乗りよりも4万円安い価格を付けている。これにより、後席スライドドアで室内空間余裕のワゴンが、売れ筋の中間グレードGで、車両本体価格230万円に設定された。

 Gグレードを選択するユーザーの多くが、ガソリンの5人乗りを選び、7人乗りを求めるユーザーはZハイブリッドを求める傾向にあるという。割合にして、約半数が5人乗りを選ぶのだ。

 これは、現行型シエンタになってはじめてわかったユーザーニーズだと、トヨタ販売店の営業マンは語る。

■小さいクルマで居住性と積載性のベストマッチを作り出す

60、70系ノア/ヴォクからのダウンサイジングでも大満足の質感は流石だ。

 シエンタとフリード、3列シート車で大きく違うのは、シエンタが2列目ベンチシートに対して、フリードは2列目にキャプテンシートを選べるという点。この違いは、3列目シートの使い勝手に大きな影響を与えている。

 シエンタの場合、3列目にアクセスする際には必ず2列目シートを倒さなければならないのだが、フリードはウォークスルーで3列目へアクセスできるのだ。そのため、フリードユーザーには、普段は3列目に乗ることは少ないが、片方だけ3列目シートを常時出して使っている人が多い。

 しかし、シエンタでは「ときどき」使う3列目を、常に出しっぱなしにしている人は少ないのだ。使うときにだけ出す、それがシエンタの3列シートである。

 そのため、先代の3列シート車を買っていて、ほとんど3列目を使わなかったユーザーや、そもそも2列5人乗りのクルマに乗っていたという人からすると、3列目シートは「あるだけ」の存在。

 あれば助かるシチュエーションがあるかもしれないが、それがいつ訪れるのかはわからない。一昔前なら、「小さなクルマに全部乗せ」が流行ったものだが、今のユーザーの多くは現実的。価格は高くなるし、ラゲッジ床は完全フラットにならないしと、あまり良いこともないから、5人乗りを選ぶのだ。

■シエンタ・フリードそれぞれの立場は大きく変わりそう

新型フリードも超魅力的!! より乗用車ライクな見た目になったぞ!! 

 新型フリードが公開され、ベースモデルからは2列5人乗りが消えて、3ナンバーのサイズになったクロススターのみに5人乗り2列シートが用意された。フリードの2列シート車が、5ナンバーサイズから外れたことで、これからの両者はガチンコライバルから、カテゴリーをそれぞれの形でけん引していく2台になりそうだ。

 シエンタは軽ハイトワゴンやルーミーのような、コンパクトスライドドア車からのステップアップに、フリードはステーションワゴンのような1つ上の車格からのダウンサイジングが増えるだろう。

 単純に2列シート車を比較すると、5ナンバーサイズを守り続けたシエンタに軍配が上がりそうだ。このクラスでは、単純に大きくて広いということが、正義になるとは限らない。

 新型フリード登場による、シエンタの需要食いは限定的になるだろうから、シエンタの売れ行きは鈍らずに、今後も続いていくはず。シエンタやフリードのように、ユーザーの方向をしっかりと向いたクルマが、国内市場に増えてくると、日本の自動車販売も再び熱を帯びてくるだろう。

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