トラックユーザーから根強く支持されているトーヨータイヤは、ここに来て、さらにトラック・バス用タイヤの開発に力を入れ始めている。

 それが顕著に見られたのが今年5月9日から3日間、「パシフィコ横浜」で開催された「ジャパントラックショー2024」に出展したトーヨータイヤのブースだ。

 大型トラック1台、小型トラック2台の車両にそれぞれ新設計のタイヤを装着して出品。タイヤメーカーが3台もの実車を展示し、新商品やコンセプトをアピールするのは前代未聞とあって、トーヨータイヤのブースは連日来場者で賑わった。

 ここでは、「ジャパントラックショー2024」におけるトーヨータイヤの出品を振り返ってみよう。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部

新製品がずらり! トーヨータイヤの展示内容

実車3台が展示されたジャパントラックショー2024のトーヨータイヤブース

 前出のようにトーヨータイヤブースには、最新タイヤを装着した実車3台が登場。このうち小型商用車タイヤを履く三菱ふそうのBEVトラック「eキャンター」、いすゞの「エルフ」、大型商用車タイヤを履くフジトランスポートが所有する三菱ふそうの8×4大型トラック「スーパーグレート」が展示された。

 また、ブース中央には、トーヨータイヤのTB(トラック・バス)タイヤ製品、リトレッド技術などを展示したほか、ステージでは開発陣によるEVトラック専用タイヤの開発秘話やトラックYouTuberによるトークセッション、プレゼンテーションなどを実施し、来場者の関心を集めた。

スタッドレスも追加発表!! 小型EVトラック「専用」タイヤ

今回新たに発表された小型EVトラック専用スタッドレスタイヤ、M951 EV

 実車展示のeキャンターには、車体右側の車輪に4月24日に発表されたばかりの小型EVトラック専用リブタイヤ「ナノエナジーM151 EV」、そして左側には会場で発表となった小型EVトラック専用スタッドレスタイヤ「ナノエナジーM951 EV」を装着。

 両タイヤともコンセプトは同じで、リブ基調とブロック基調を組み合わせた非対称パターンを取り入れることでEVトラックの特性に対応した専用タイヤとなっている。

 ちなみに他のタイヤメーカーもEVトラック「向け」タイヤは展開しているが、「専用」タイヤを謳うものは国内TBタイヤとして初。

 縦溝のリブ形状は剛性が高く低電費性能や耐摩耗性能に優れ、横溝を切ったブロック形状ではエッジ効果によりトラクション性能やグリップ力に優れる特徴がある。この特徴を融合させ、車両に正しい向きで装着することで、EVの重い車重に対する耐偏摩耗性能や、モーター駆動の高トルクに負けないトラクション性能を確保したのが今回のEVトラック「専用」タイヤというわけだ。

低燃費タイヤなどで採用されるリブ基調と、オールシーズンタイヤで採用されるブロック基調を組み合わせた非対称パターン(写真はM151 EV)

 なお、同様のコンセプトを持つ非対称パターン自体は過去にもトーヨータイヤのTBタイヤで前例があり、今回EV専用タイヤとして復活した形になる。

 M151 EVは6月、スタッドレスのM951 EVは秋に発売を予定している。展開サイズは215/70R17.5 123/121Jの1サイズ。このサイズは新型eキャンターの中で売れ筋の中間車型、GVW(車両総重量)6.8〜7.4tクラスに設定されるもの。他のサイズについては市場の状況をみながら検討していくとしている。

小口配送に最適な新しい小型トラック用リブタイヤ

小口配送の特性に合わせて開発した小型トラック用のリブタイヤ、M135

 いっぽう、新型エルフに装着されたタイヤは、ロングライフと低メンテナンス性を追求した小型トラック用タイヤ「デルベックス」シリーズで統一(eキャンターは低燃費タイヤ「ナノエナジー」で統一)。

 車体左側にスタッドレスタイヤ「デルベックスM935」(2020年発売)、右側には4月24日に発表されたリブタイヤ「デルベックスM135」が装着された。

 M935については割愛するが、M135はEコマースが拡大成長し小口配送ニーズが増大していることを受け、今回新たに開発されたタイヤだ。

 小口配送ではストップ&ゴーのような運転パターンが多く、また人手不足から運転に不慣れなドライバーも多いことから、低燃費性能を満たしつつ耐摩耗・耐偏摩耗性能を向上させ、濡れた路面でも安全に止まれることを目指したという。

新設計となるM135のトレッドパターン

 次世代タイヤ材料配合技術を使った新配合の耐摩耗コンパウンドをトレッドキャップゴムに採用し、ベースゴムには低燃費用の配合を採用することで耐摩耗・耐偏摩耗性能、ウェット性能、低燃費性能を向上。

 さらに新設計のトレッドパターンでは、センター部に大型センターブロックを配置したことなどによりタイヤ転動時の過度な動きを抑制、耐摩耗性能等をアップしたほか、センター部をワイドにすることでタイヤの変形を抑え、積車時・空車時問わず幅広い領域でグリップ力を発揮できるようになった。

 このM135は16サイズ、6月から順次発売される予定だ。

低床4軸車向け低メンテナンス・オールシーズンタイヤ

開発中の低床4軸車向け低メンテナンス・オールシーズンタイヤ

 またフジトランスポートのスーパーグレートには、低メンテナンスのコンセプトタイヤを装着。これは8×4の低床4軸車向けに開発したタイヤで、偏摩耗を抑えて均一に摩耗させることでライフ性能を伸ばし、メンテナンス費用削減を目指したオールシーズンタイヤとなる。

 メーカーが新しいタイヤを開発する際、基本的にどのタイヤでも低メンテナンス性を重視しているが、特に低床4軸車用のロープロファイルタイヤ(低偏平タイヤ)では、前2軸のうち助手席側の2番目のタイヤが偏摩耗しやすいとされている。

 そこで今回、偏摩耗を抑え均一に減るように、リブ基調のトレッドパターンの採用やコンパウンド配合・構造も含めて新設計し、低床4軸車用に最適な低メンテナンスのオールシーズンタイヤの開発に着手した。

 まだコンセプトタイヤで名称も備わっていなかったが、すでにフジトランスポート等の運送会社で実用供試が行なわれており、今後発売が見込まれる。なお、タイヤサイズは今のところ245/70 R19.5の1サイズを予定しているという。

「新たにバス事業者も加えた感謝プロジェクト」も継続中

トーヨータイヤブースで行われたトラックYouTuberによるトークセッションの様子

 「ジャパントラックショー2024」のブースを見るだけで、トーヨータイヤがいかにTB用タイヤに力を入れているかが分かると思うが、同社では3年前から「トラック物流感謝プロジェクト」も展開している。

 これは2020年のコロナ禍を機に始動したプロジェクトだが、感染症が落ち着いた今日、「2024年問題」という新たな難題が出現。この問題に直面しつつ、私たちの生活を支えるために日夜頑張っているトラック・バス事業に携わるすべての人たちに感謝を伝えようというプロジェクトである。

 具体的にはトラック・バスユーザー/ドライバーの自慢のトラック・バスと素敵な笑顔が主役のムービーを制作するもので、今年のテーマソングは「スキマスイッチ」が担当している。ムービーは今年8月上旬にYouTubeで公開予定なので、どうぞご笑覧を!

●トーヨータイヤのトラック・バス用タイヤ製品サイトはこちらから
https://www.toyotires.jp/product/tb/

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