過去最高となる590社・1378小間が出展し、5月22~24日の3日間、パシフィコ横浜で開催された自動車技術展『人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA』に、会期3日間でのべ75,972名が来場。世界初や日本初となる様々な最新技術が披露された。
カーボンニュートラルの実現に向けた最新の自動車部品や部材、車体設計の研究・実験用の出品が多く、技術者や研究者向けの訴求が目立った中で、カーディテイリングを含めた幅広い自動車アフターマーケット・ビジネスでの活用が期待される商材をピックアップして紹介したい。
疎水・親水コーティングの確認・評価ができる「接触角計」
ゴムや化学品・グリーンテクノロジー事業などにおいて複数の海外メーカーと代理店契約を結ぶ貿易商社として知られる三洋貿易株式会社が、ドイツ・KRUSS社製のハンディ3D接触角計「アイリス」を出品していた。
同製品は、疎水や親水コーティングの確認・評価を行える接触角計。塗料やコーティング剤を塗布したボディなどに対し、本体の測定ボタンを押すことで付属専用カードリッジから純水を1滴噴射(着液)。90個のLED光源が液滴を覆うように配置され、液滴表面で反射される光のパターンを2台のカメラで解析し接触角を算出する。わずか数秒で本体ディスプレイ上に測定結果とOK/NGの判定結果が表示されるという。接触角(ぬれ性)とは、固体面に液体を落としたときにできる液滴のふくらみ(液の高さ)の程度を数値化したものを指す。
主な用途は、切断が難しい大型サンプルや自動車部品などの完成品の品質評価に使用され、自動車ボディの洗浄やワックス面の評価、内装部品の測定に使用されている。
三洋貿易のスタッフによれば、これまでカーコーティング施工車を計測した実績はないが、疎水・親水コーティングの評価を計測できるはずと話していた。
このほか、三洋貿易のブースには、イギリス・Rhopoint Instruments社製の光沢計「Rhopoint IQ2/IQ3」があった。同製品は目視では曖昧な評価になる光沢度を、人間の目に近い表面品質で数値測定できるという。塗装面の光沢や外観評価、自動車・船舶などの表面品質評価に使用されており、金属面の光沢だけでなく、樹脂や木材、石材などの表面品質評価にも使用されているようだ。
疎水・親水コーティング施工や光沢度を数値で評価し、施工証明書などに記載して、カーオーナーに渡すことができれば、カーディテイリング施工の質を具体的に提示することができるのではないだろうか。実際に施工車のボディを計測し、どのような結果になるのか試してみたい。
手軽に素早く高精度なボディ測定を行える「3Dスキャナー」
産業機器の製品設計CAD・CAEシステムに関する受託・開発やコンサルティングを行う株式会社富士テクニカルリサーチが、アメリカ・AMETEK社クレアフォームブランドのポータブル型3Dスキャナー「MetraSCAN3D」を出品していた。
同製品は、測定に必要な固定セットアップが一切不要で、使用者の熟練度に左右されることなく正確に測定。15本のレーザークロスと高い測定速度が特徴のハンディ型3Dスキャナーと専用スタンド(C-TRACK現場用スタンド)を組み合わせ、形状や複雑さに関わらず、あらゆる部品を精度を損なうことなく簡単に測定できるという。スキャンデータはモニター(別途)にてリアルタイムで表示可能とのこと。
部品製造工場や測定ラボ向けで、完成品の品質を迅速かつ効率的に計測。品質管理や品質保証のために使用されているようだ。
自動車修理の現場で活用できるのか。富士テクニカルリサーチのスタッフに尋ねたら、今回は出品されていなかった「HandySCAN 3D | MAX Series」であれば、スキャナー計測と写真撮影も可能なため自動車修理の現場でも役立つと話していた。光沢やマットなどあらゆる種類のボディ塗装面でも高精度かつ高解像度で計測でき、事前の表面処理や準備は特に必要ないという。実際の鈑金塗装作業において、どういった時に役立つのか試してみたいと思える商材だった。
採用に期待したい、AI利用「走行キャリブレーション技術」
株式会社モルフォが出品していた、AI利用による走行キャリブレーション技術「Morpho Visual Calibrator」も気になったので紹介したい。
車両にターゲットマーカー・カメラ4台(正面 /運転席/助手席/後方)を設置し、AIを利用して走行中に撮影した映像からカメラの位置関係を推定してズレを調整できるところが特徴。ターゲットマーカー・カメラを車両に搭載し、車載ECUと外部PCにインストールしたアプリケーションとの連携でキャリブレーションする仕組みで、現時点では景色が映らない暗闇では撮影不可。カメラの調整は可能だが、レーダーセンサーの調整は行えないという。
既販車への後付けは可能なのか。モルフォのスタッフに尋ねたら、不可能ではないが大幅な改造が必要のため、後付け改造に協力してくれる事業者がいれば相談したいと話していた。
新型車に採用されれば、現在整備事業者が行っているキャリブレーション(エーミング)作業は大幅に簡略化され、ターゲットなどの専用機器も不要になることだろう。今後の動きに注目したい商材だった。
人とくるまのテクノロジー展は、新車製造向けの最新技術が披露される展示会だが、今後の自動車アフターマーケット・ビジネスに影響を与える可能性を感じる商材を見つけられる場ともいえる。
自動車アフターマーケット事業者は、こういった催しに積極的に足を運んで情報収集することで、新規ビジネスのヒントを見つけてほしい。なお、6月5日まで『人とくるまのテクノロジー展2024 ONLINE』が開催される。
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