BYDオートジャパンは2024年5月29日、東京工科自動車学校中野校でEVの特別講座を開催した。同校の生徒たちを相手にBYD側の講師として同社社員が立ち合い、自動車整備ビジネスの今後についても熱く語った。その模様をレポートしよう。
文、写真:ベストカーWeb編集部・渡邊龍生
■一級自動車整備士を目指す生徒24名が受講
今回行われた同校でのEV講座は初めてとなる試み。次世代の整備士になるべく同校で日々の授業を受けている生徒、一級自動車整備課3年生の24名に対し、EV最新情報や従来までのガソリン車と異なるEVならではの基本構造や特徴に加え、来たるべきEV時代に向けた新たな自動車整備サービス業務について講座を実施。
同校は学校法人小山学園(山本匡理事長)の運営する自動車学校で、都内では中野以外に世田谷や品川に学校を持っている。今回、BYDの特別講座を受講することになった一級自動車整備課は4年制となっており、国家認定の特定整備認証工場にはこの一級整備士の存在が欠かせない。
当日、講師役を務めたのはBYDオートジャパンアフターセールス技術部門の三上龍哉シニアアドバイザー。三上氏はこれまで日産ディーゼル工業を皮切りに、フィアットオートジャパン、ボッシュ、VWグループジャパンでアフターセールス部門に従事し、BYDオートジャパンには2021年から技術顧問として活動している。
ちなみに三上氏は同校の卒業生であり、同校校長の佐藤康夫氏が2024年の東京オートサロンでBYDブースを訪れたことなどから今回の講座開催に至ったという。三上氏はいわばOBとしての立場から後輩たちへの講座を行うことになったのだそう。
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■来たるべきカーボンニュートラル時代に向けて
この日の講座は、座学とBYDの実車を使った研修の各90分ずつの構成で行われた。まず、座学ではBYDの概要について三上氏からレクチャーが行われ、そもそものEVの概念に始まり、その基本構造と駆動バッテリーの種類や技術構成などについて説明が行われた。
EVの航続可能距離についてはエアコンの使い方が濃厚にかかわっていることが説明され、EVの基本構造についてバッテリーから発生するそもそもの電気が直流であること、モーターへの電気は交流になることなどについて詳細を生徒たちに説明。
また、今後EVの整備を行ううえでこれまでのガソリン車とは何がどう違ってくるのかというポイント、パワートレーンやブレーキ、エアコン、電子制御に電気系統など多くのコンポーネンツにこれまでのクルマとは違う認識が求められることを指摘。
■いよいよATTO3とドルフィンの実車を使った研修に
座学のあとは実際に実車を使った実習室での研修に移動。BYDが現在、市販している2台のクルマ、ATTO3とドルフィンを使ったレクチャーが三上氏のもとで生徒たちに実施された。
BVDでは独自のEV診断機を用いて、車両の状態を把握するシステムによるメンテナンスを行っているのだが、この日もそれを実践。実際にコンピュータを使った車両診断でどのように故障を把握するのかについてデモンストレーションが展開された。
また、最近は真夏に我が子を車内に置き去りにする悲惨な事故が度々発生していることを受け、幼児置き去り機能実体験を実施。BYD車両には幼児置き去りに対するアラート機能(車内に人間が放置されると、前部と後部に設定されたセンサーが検知してけたたましくアラート音を鳴らす)が実際に作動することを生徒たちが実際に体感していた。
今回の講座を取材していて改めて思ったのは、整備士を目指す生徒たちにとっては実車が何よりの「教材」となるということ。なぜなら、座学の際中には居眠りをしていた女子学生が実車での研修になると目の色を変えてドルフィンの車内に座り込んで、生き生きとした表情を浮かべていたからだ。
これについては講師役の三上氏も「いや、私も自分の座学がつまらないから彼女の態度がそうなったのかと思っていたのですが、実車に触れる体験というのがいかに整備士を目指す生徒たちに大事なのかということを実感できました」と吐露していた。
■来たるべきカーボンニュートラル時代に向けて
今回のEV特別講座が同校で開催されたのは同校校長の佐藤康夫氏とBYDの三上氏のこれまでの交流から企画されたものだったという。
今後、クルマ界はBEVをはじめとしてPHEVなどカーボンニュートラル実現に向けて電動車両の整備が今以上に重視されていくことは間違いない。今回、BYDが実施した整備士向け講座もますますその必要性が向上していくのだろうな、と今回の取材で改めて思わされた。
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