「トヨタ、お前もか」---。こう思った人も少なくないだろう。トヨタ自動車は6月3日、『クラウン』や『ヤリスクロス』など計7車種の認証試験で不適切な行為が見つかったと発表し、緊急の記者会見を行った。


◆不正の実態を把握できていなかった

「今回の事案はトヨタ自動車とトヨタ自動車東日本の2社にまたがる問題です。日野、ダイハツ、豊田自動織機に続き、グループ内で問題が発生していることに対して、トヨタグループの責任者として、お客さま、クルマファン、すべてのステークホルダーの皆様に心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」

豊田章男会長は会見の冒頭、こう話して頭を下げた。今年1月30日に行ったトヨタグループビジョンの記者会見のときには、自社の不正について「私の知っている限りはない」と話していた。どうも今回の国土交通省から調査を求めるまで、不正の実態を把握できていなかったようだ。

◆よりも厳しい条件で試験をしているので大丈夫だと

というのも、現場では認証試験よりも厳しい条件で試験をしているので大丈夫だとの解釈からだ。例えば、前面衝突時の乗員保護試験では、認証試験の基準よりも厳しい衝突条件をつくり出すために「タイマー着火」という手法を用いた。また、後面衝突試験では、法規で指定されている1100kgの台車より重い1800kgの台車を使用。歩行者頭部および脚部保護試験でも、衝撃角度50度より厳しい65度で試験を行っていた。

「法規で定められた基準はクリアしているので、安全に使えることを確認している。しかしながら、こうした行為は認証制度の根底を揺るがすもので、自動車メーカーとして、絶対にやってはいけないことだと考えている」と豊田会長は強調し、2月から自身が中心となって法規認証をテーマとした「トヨタ生産方式(TPS)自主研究会」を実施しているという。

◆物と情報の流れを見える化へ

「認証に関わる業務の中で、特に不具合が多く発生している工程に着目し、物と情報の流れを見える化することから始めた。今は、それにより明らかになった仕事の仕組みの課題に対し、具体的な改善活動に着手している」と豊田会長。

その認証に関わるプロセスを整理したら、リードタイムが約1年と長く、しかもこの全体像を把握している人が一人もいなかった。「非常に曖昧で、属人的な技能に頼っているケーズが非常に多かった。最終の試験で問題が発覚して、短い納期で何度もやり直しをしており、そこに大きな負担をかけてしまったのではないかと思う」と豊田社長は不正が起こった要因について語り、こう付け加えた。

「長いリードタイムで多くの部署が関わり、原因は1つの理由ではない。どうして滞留が発生しているのか、今の段階では、それぞれの認証項目において、各工程でなすべき作業などを標準化し整理した段階だ。その仕組みができるまで年末までかかる」

◆認証制度の在り方にも問題が?

いずれにしても、自動車の認証制度に関しては不正が相次いでいる。同日、トヨタのほかにも、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機で認証不正があったと発表している。これだけ相次いでいるとなると、認証制度の在り方にも問題があるのかもしれない。

自動車業界は100年に一度の大変革時代を迎えており、ADASや自動運転、電動化と技術的な進歩は目覚ましく、認証制度も時代に合わせて見直していく必要もありそうだ。豊田会長も「現場の認識とギャップがある」とその辺りを期待している様子だった。

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