首都高速道路株式会社の調査によると、雨天時の時間あたりの事故件数は晴天時と比べて約5倍にもなるという。要因として、視界の悪さやタイヤのグリップ力の低下などが考えられるが、今一度「雨天時の走り方」について考えてみたい。

文/山口卓也、写真/写真AC

■雨天時の深夜は晴天時の約7倍の事故率!

「夜間+雨」は事故発生率が最も高い魔のシチュエーション。周囲が見えにくくなるため、歩行者や自転車を見落としがちになり、人身事故も発生しやすくなる

 雨天時の時間あたりの事故件数は晴天時の約5倍、夜間には視界がさらに悪化するため、深夜ともなると晴天時の約7倍にもなるという。

 この調査結果は「首都高速道路」の話ではあるが、一般道においても雨天時は晴天時に比べて圧倒的に事故発生率が高いのはいうまでもない。

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■雨天時は施設接触事故、晴天時は追突事故が多い

 雨天と晴天では、起きやすい事故も違ってくる。

 晴天時では追突事故が事故全体の半分を占めるのに対し、雨天時は施設接触事故が圧倒的に多くなるという。この「施設接触事故」とは、他車や物、自転車、歩行者などに接触する交通事故のこと。事故の相手がケガを負った場合には「人身事故」、相手の損傷が物のみの場合は「物損事故」となる。

 雨天時では、1時間あたりの施設接触事故件数は10倍にもなるといわれるが、もちろん追突事故や車両接触事故も晴天時よりは圧倒的に高い。

■事故原因として一番多いのはスリップ

 高速でカーブに進入し、グリップを失ったタイヤがスリップ。追い越し時の急加速でスリップ。路面のわだちにできた水たまりに進入してスリップ。急ブレーキを踏んでスリップ……などがある。

 大きくスリップしたことはなくても、高速道路の路面の継ぎ目で少しスリップしたり、濡れたマンホールのフタで少しスリップしたりしてヒヤッとした人なども多いだろう。

 降り始めにかなり減速して走るドライバーは少ないかもしれないが、降り始めこそ滑りやすいという事実もある。「あ、雨が降ってきた!」と思ったら、意識的に少し減速して走るのが有効だろう。

■雨天時はなぜ事故が起こりやすくなるのか?

 雨天時はタイヤのグリップ力が失われやすく、スリップを誘発して事故につながることが容易に理解できる。このほかの理由としては

・視界が悪くなり、歩行者や自転車の認識が難しくなる
・周りがノロノロ走行していて、気持ち的にイライラする

などがある。

「視界が悪くなり、歩行者や自転車の認識が難しくなる」は、ゲリラ豪雨などのシーンを思い浮かべるかもしれないが、降り始めでワイパーを動かしていないような時にも視界は悪くなる。

 また、降雨によって車内の湿度が高くなり、結露によってウィンドウが曇って視界が悪くなる場合もある。

 対策として、「ワイパーは早めに動かす」「ウィンドウが曇り始めたら、フロントウィンドウの曇りを集中して除去するデフロスター(リアウィンドウの場合はデフォッガー)を稼働させ、エアコンを外気導入モードにして稼働させる」を行ってほしい。

 ウィンドウが曇りやすいという人は、ウィンドウ自体に埃や油汚れなどが付着していることも考えられる。濡れたウェスで拭いた後で乾いたウェスで水分を拭き取ったり、油膜除去剤などを使って日頃からウィンドウをきれいにしておく習慣をつけるといいだろう。

 また、ドライバーの視界が悪くなる雨天時はヘッドライトをオンにし、周りから認識されやすくすることも重要。

 雨天時の歩行者や自転車への接触事故では、「ぶつかるまでクルマが来ていることに気づかなかった」という人も多い。歩行者や自転車へ細心の注意を払って運転することはもちろん、自車の存在をきちんとアピールすることも事故を防ぐには有効である。

「周りがノロノロ走行していて、気持ち的にイライラする」では、雨が降りそうな日は時間的な余裕を持って行動することがもっとも大事だろう。

 また、雨天時にイライラしたり不安になったりするのは、何も特別なことではない。雨天時は低気圧の状態であり、人体的には頭痛やめまい、神経痛などの症状を引き起こしやすい状況ともいわれているからだ。ただし、あまりに重い症状なら専門医に相談がベスト。

■ハイドロプレーニング現象とは?

タイヤの溝は排水機能を持つ。溝の深さが4mm以下になると排水機能がしっかり機能せず、ハイドロプレーニング現象が発生しやすくなる

 雨天時の高速道路で起こりうる現象としてよく取り上げられる「ハイドロプレーニング現象(アクアプレーニング現象とも呼ばれる)」。

 通常、路面の水はタイヤの溝を通して排水されるが、速度が上がることで排水が追いつかなくなる。こうなると水の上を滑走するような状態になり、ハンドルがまったく利かなくなって危険!

 ハイドロプレーニング現象は、タイヤの溝が過度に摩耗していたり、空気圧不足などもその原因となる。

 その対策は「スピードを抑えて走行する」「タイヤの定期点検を行う」だ。

 一般的なタイヤの溝は新品時で8mmだが、4mm以下になるとハイドロプレーニング現象が起こりやすくなるといわれている。

 また、路面にできたわだちには水が溜まりやすい。ハイドロプレーニング現象は水が溜まっている場所で起こるので、水が溜まっていると思われる車線を走らないことも重要だ。

 それでもハイドロプレーニング現象が起きてしまったら……ハンドルは切らない&ブレーキを踏まず、グリップ力が回復するのを待つのみ! かなり怖いけど……。

 今回は雨天時の走り方について話した。そもそも事故は、自分さえ運転に気をつけていれば避けられるものでもない。被視認性を高めるためのライトオンなども忘れずに行いたいものですね。

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