2024年3月20日、インフィニティのフルサイズ高級SUV「QX80」のフルモデルチェンジが発表された。インフィニティの新しいデザイン言語に基づく内外装と、最新のテクノロジーが搭載されたというが、その内容には、「え、そうなの!??」と、すこし残念に思った点もあった。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:INFINITI
「ツボ」は抑えているものの、斬新さはイマイチ
従来モデルのQX80が登場したのは、2010年のこと。北米市場がターゲットのフルサイズSUVとあって、堂々とした佇まいや迫力のある存在感、力強さが求められるが、Q80はそうした需要にもしっかりと応えるモデルとして登場した。以降、定期的にフェイスリフトが行われてきたが、登場から14年、さすがに古さが目立つようになってきており、今回のフルモデルチェンジで次世代モデルへと変貌を遂げた。
新型QX80は、インフィニティのアイコンでもある「ダブルアーチグリル」に、竹林からインスパイアされたという縦型の格子形状を採用。その流れを汲みセグメント化されたデザインのLEDシグネチャーランプも、どこか落ち着いた上品な雰囲気でありながら、存在感と個性を主張している。
リアコンビネーションランプは、最近よく見られる横一文字形状を基本としながら、やはりセグメント化された形状のLEDランプを配置。腰高のボンネット、水平基調のベルトライン、フラッシュドアハンドル(格納式のドアハンドル)など、フルサイズSUVに求められる「ツボ」は抑えているように思えるが、思わずハッとしてしまうような斬新さは、筆者は感じなかった。
QX80の中古車をもっと見る ≫インテリアは、高級SUVモデルとして不満のない内容
インテリアは、水平基調のダッシュボードに職人の手仕事を感じさせるレザー仕立てのトリムが施されているほか、ドライバーズメーターとインフォメーションディスプレイはそれぞれ14.3インチのものを搭載。ダッシュボードの助手席側には、イルミネーションによって細いラインが何本も引かれており、中央にはINFINITIの文字が配置されるなど、流麗で優雅な動きを表現した新しいデザイン言語が採用されている。
セミアニリンレザーシート、前席/2列目シートには冷暖房機能、3列目シートにもシートヒーターの装備、生体認証を利用した快適な温度調節機能、米国の音響メーカー「Klipsch」のプレミアムオーディオシステムの採用、プロパイロット1.1(トップグレードは2.1)など、高級SUVモデルとしての装備に不満はないだろう。
パワートレインが弱い e-POWERなりハイブリッドの選択肢はなかったのか?!
この新型QX80のリリースをみて、筆者が残念に思ったのは、パワートレインが3.5L V6ツインターボのVR33DDTTエンジンのみだった、という点だ。VRエンジンのDDTTということで、GT-RのVR38DDTTのデチューン版になると考えられ、最高出力450HP(約456ps)、最大トルク516 lb-ft(約700Nm/71.33kgm)で、ライバルのレクサスLX600(最高出力415ps、最大トルク415Nm)と比較してもかなりパワフル。トランスミッションは9速ATで、後輪駆動か電子制御4WD、上級グレードは標準で4WDというラインアップになる。
従来モデルには5.6L V8ガソリンエンジンが搭載されているため、ようやく時代に合わせたダウンサイジングは行われたものの、2018年にはすでに電動化への取り組みを加速すると発表しているインフィニティのフラグシップSUVが、このタイミングでもハイブリッドやe-POWERなどの技術が全く見られないのには、疑問を感じずにはいられない。
インフィニティの新しいデザイン言語「Artistry In Motion」は、ブランドのEVの方向性を示したコンセプトカー「Vision Qe」(2023年10月発表)に採用されていたものであり、筆者はこのデザイン自体が新しいEV時代の到来というイメージと結びつけ、捉えていた。しかしその市販車第1弾がモーターを搭載しないQX80というのには、肩透かしを食らった気分だ。
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QX80は、フルサイズSUVであることから、ガソリンターボのみでも需要は満たせるだろうが、このアプデートの内容はビッグマイナーチェンジの範疇に感じられ、このタイミングでリリースする新モデルとしてはかなり残念な内容だ。せっかく新しいデザイン言語を採用するのであれば、日産の持つ電動化技術をもっと積極的に採用して欲しかったと思う。
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