1990年代のマツダはディーラーの多チャンネル化を受けてさまざまなクルマをリリースしたが、画期的なスポーツセダンも送り出した。それがランティスクーペ。なんと世界ツーリングカー選手権にも参戦したマツダ版「タイプR」だったのよ!

文:ベストカーWeb編集部/写真:マツダ

■ベストカー編集部でも社用車として活躍した!

マツダ ランティス 4ドアクーペ。かっちょいい!

 1990年代のマツダは「マツダ」「アンフィニ」「オートラマ」「ユーノス」「オートザム」という5つの販売チャンネルを抱え、販売車種の多様化に挑んでいた。そんな中、ファミリアのスペシャリティカー的位置づけだったアスティナ/ユーノス100の後継車として登場したのが、ランティスだ。

 ランティスにはオーソドックスなセダンもあったが、クルマ好きの視線を集めたのは、もう一つの4ドアクーペだ。横長ヘッドライトが主役のグリルレスのフロントマスクと、セダンより25cmも短いボディは、確かにクーペっぽく、引き締まった走りを彷彿とさせた。

 実際その走りはすごかった。エンジンはベースモデルこそ1.8L直4DOHCだったが、上位グレードが搭載したのがまさかの2L・V型6気筒! このエンジンはカペラ後継であるクロノスにも積まれたのだが、ランティスのほうが10馬力高出力で、170psを発揮した。

 実はベストカー編集部はこのV6ランティスクーペを社有車にしていた時代があり、取材の足として活躍した。高回転まで一気に回るV6のスムーズさと引き締まった足回りが記憶に残っているが、首都高などではその利を活かして爽快な運転が楽しめた。

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■全日本ツーリングカー選手権に唯一のV6マシンとして参戦!

こちらはあまり話題を集めなかったランティス セダン。クーペより25cm全長が長い

 日本では1994年にツーリングカーレースのカテゴリーが変わり、それまでのグループAに代わって2Lの4ドアセダンによる全日本ツーリングカー選手権が開催されるようになった。各社が軒並み直列4気筒のセダンを投入する中、驚くことにマツダはV6を積むランティスを投入したのだ。

 実際のレースでは、小排気量のマルチシリンダーエンジンゆえにトルクに欠け、目立った戦績こそ残せなかったが、サーキットを走るランティスの姿は、背の高いセダンの中にあってクーペ感をアピールしていて、実にカッコよかった。

 ちなみにマツダスピードなどはセンターに支柱の付いた巨大なルーフスポイラーを発売し(当時のWRCマシン、フォード・エスコートにそっくり!)、そのクーペ感をいっそうあおったものだ。

 ランティスは4ドアクーペを名乗っていたが、リアハッチがガバッと開く5ドアで使い勝手もよかった。さらには欧州でデザインされたためか受動安全にも前向きで、1996年に改正された衝突安全基準に適合した最初のクルマともなった。

 近年のマツダはSUV王国と化しているが、アイコニックSPを見ても分かる通り、クーペを支持する声も熱い。いつかランティスのようなスポーツセダンを復活させてほしい!

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