現在、1980年代から2002年にかけて生産されたネオクラシックカーの大ブームが巻き起こっているのはご存じの通り。そのクルマに興味がある人は、きっと新車当時の評価を見たい、聞きたいハズ! ということで、ベストカーが掲載した新車当時の記事をリバイバル! その時代を過ごしたおじさん(昔は若者)にも、今の20代のクルマ好きにもその記事は歴史的遺産ではないかと。巻末にはAE86に乗っている20歳のバイトの子に、これを読んでどう感じたかも紹介!
この記事はベストカー1993年7月10日号(著者は国沢光宏氏)を転載し、再編集したものです
■280馬力のスープラRZの6MTとNAのSZを試乗!
いよいよ日本仕様のスープラ、である。前置きはすべてパス。さっそく試乗といこう。 一台目はお約束どおりRZの6MTモデル。大きめのドアを開けてコクピツトに納まる。
まずはアメリカ仕様より40馬力もダウンしているエンジンのチェツクからいこう。3速を選び、2000回転から全開するとどうだ。320馬カモデルよりもパワー感があるじゃないの。レスポンスは良好。
320馬カパージョンより低めの回転域からトルクは出ている。もちろんトップエンドのパワーは多少落ちてるんだと思うが、一般道ではほとんど違いもわからない。だって2速とか3速はレッドゾーンまで一気だもの。
4速になれば差を感じるんだろうけど、今回の山道じや試すのは不可能。おそらく上を削ったぶん、しつかり低回転にトルクを振ったんだろう。
カタログデータではライバルと同じ280馬力ながら、実力的にはナンバー1だと思う。加速でスープラにかなうクルマはないと思う。
パワーを楽しんでいると、いよいよワインディングロードの入り口だ。トラクションコントロールをオンにして、様子をみることにする。1つ目の左コーナーに飛び込んで、アクセルを全開にした、と思って欲しい。
■280馬力を調教するトラコンはカンペキ!
ボクはこの手の機能が嫌いだから、めったにオンしない(愛車のNSXも雨の日にお世話になる程度)。そうはいってもF1でさえこういったシステムを使う時代だ。
しかもトヨタによると「これまでのものとは全然違います」という。確かにシステムをみると、今までのタイブとは少々違い、従来のトラコンに比ベスープラのものは、可能な限りリアタイヤの駆動力を引き出そうとするのが狙いである。
で、アクセルを踏んだらどうだったか、ということの続きといこう。結論からいうと″ふ〜ん″である。こう書くと普通の人は「なんだ、よくないのね」みたいに思うかもしれない。
でもボクにとっては最高の評価といってよろしい。ドリフトはできないものの、速いのだ。
従来型トラコンのように、サーキットでオンにするとラップが1秒も2秒も落ちることはないと思う。いや、けっこうウデのあるドライバーのアクセルコントロール以上の速さといっていいかもしれない。
一般的なトラコンは、スリップを感知するとアクセルをオフ。パワーをガッツリ絞った。対してスープラは、クルマ自体が微妙なアクセルコントロールをしている感じなのである。
トラコンが働いた時の失速感もない。トラコンをオンにしていれば、コーナーでアクセルを全開にしていても大丈夫。
クルマの限界に達すると自動的にパワーは落ちて、そこからはクルマが最適な加速をするようにコントロールしてくれる。誰にでも速くて安全な、そして楽しいコーナリングができるワケだ。
そうそう。ABSも素晴らしい完成度。これまたコーナー手前で思い切リペダルを踏めば、たとえコーナーリング中であっても最高の制動力を発生する。
ABSの制御に関しては、どんなにウデのあるドライバーでもかなわないレベル。100点を進呈したい。ただし耐フェード性能については、やはり17インチのアメリカ仕様のほうが上。
アップダウンの激しい箱根でのブレーキテストは、最悪に近い使用条件でフェードしないのはNSXタイプRとGT-R Vスペックぐらいのもの。とりあえずこのままでも充分だろう。ちなみに効きはまったく17インチと変わらなかった。
■ダイレクトなフィール、乗り心地も最高!
さて、ここでトラコンをカットしてクルマ好きのお兄さんに変身してみましょう。とりあえず気合いでコーナーに飛び込み、ブレーキでフロントに荷重を移しつつハンドルを切り込む。
ラリーみたいな走り方を想像してもらえばよろしい。すると気持ちいいじゃないの。クルマがドライバーの操作に忠実なのだ。手と足がブレーキとハンドル、アクセルにそのままつながっている感じ、とでも表現すればいいのだろうか?
ハンドルを切れば素直にノーズはインを向き、パワーを掛けるとややドリフト気味に、それでいてキチンとトラクションがかかって加速する。この一連の動きが見事に決まるのだ。
たいてい人間の操作とクルマの反応にはズレがあって(ゴムみたいなものが存在する感覚)、それの動きを予測しながら操作を行う。
スープラはN1のレーシングカーみたいな一体感がある。ハンドリングでベタ誉めされるNSXタイプRと非常によく似ている。異なるのは、恐ろしく乗り心地がいいということ。
時間があればいつまでも乗っていたくなってしまう。きっとサーキットでも攻めたら、もっともっと楽しいに違いない。
2台目の試乗車はノンターボのSZ。280馬力のカゲに隠れてしまったが、実力は充分。フル装備で300万円を切るプライスも魅力。ターボと同じコースでテストしてみたけど、驚いたことにけっこう速い。
タイトなコーナーが続く区間ではターボより、アクセルレスポンスも良好で、速さはいい勝負。
フルにパワーを使い切れるのだ。ちょうどユーノスロードスター的な持ち味で、大いに気に入ってしまった。普段の足に使うのもオシャレ。燃費もいいだろう。
■パワー、ハンドリングは世界トップレベル
素晴らしいハンドリングは、世界的にみても間違いなくトップクラスである。アウトパーンに持っていけば、ポルシェを散らすことだって可能だ。
じゃあライバル車は全然魅力がなくなってしまったかというと、そうでもない。
NSXはスープラより少しだけ遅いかもしれないが、こいつは日本車には珍しく本物のスポーツカーの雰囲気を持っており、ボクは10年くらい乗ってやろうかと思うくらい気に入っている。
三菱GTOは雨の王者だ。さすがのスープラも、雨が降ればGTOには勝てないだろう。
GT-Rはワインディングロードでスープラより確実に速いし、RX-7(FD3S)だって手頃な価格と軽いボデイは強力な武器ではなかろうか。
それぞれ得意とする分野が違うから、自分の好きなものを選べばいいのである。
スポーツカーというのは女の子みたいなもので、あるレベルから先は自分の好みが決め手となるのだ。ただスープラの強烈な魅力には若いオジサンも結構まいった。
■いまクルマ好きの若者はどう感じたのか?
僕は今20歳の大学生アルバイトのIです。現在AE86 GT APEXに乗らさせていただいてます。
スープラ80は映画や漫画に多く登場し、かの有名な映画「ワイルドスピード」にも登場していましたね。
そうした影響もあり、今では世界中で大人気のスープラ80。僕も乗りたい!と思い中古車販売サイトを覗くと…..なんと最低価格で1000万円!?
無理です。買えません。てか今買ったら支払いに追われて結局乗れない絶対….. ローン1000回払いとか出来て初めて検討する、そんな感覚です。
まあ多分発売当時のRZの価格、448万円でも僕には鬼ローンを組まない限り無理ですけど….. でも大学を出て数年経てばもしかしたら買えた!と思うと、当時にワープしたい気分になります。
とにかく!当時のインプレッション記事なんて滅多に見れるものでは無いので、今回のような記事は読んでいてめちゃくちゃ面白かったです。
「クルマがドライバーの操作に忠実なのだ。手と足がブレーキとハンドル、アクセルにそのままつながっている感じ」というくだり。今の時代にこうしてクルマ自体を楽しんでいる人がどれだけいるんだろう。
何か大事なものを思い出したような、そんな気持ちになった記事でした。読めば読むほどスープラ80乗ってみたくなりますよね。大人になったら買っちゃおうかな~!なんて
でもごめんなさい。あと数十年は86乗ってたいです。
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