ランボルギーニの新たなフラッグシップ「レヴエルト」。ベストカーWebではその試乗にあたり、名うてのスーパーカー乗り、清水草一氏に声をかけた。唯一盲点だったのは、清水氏が還暦を過ぎた身であるということ。雨の富士スピードウェイで、はたして氏は、1015馬力とどう対峙したのか? 随行した編集者まで61歳という、前代未聞の初期高齢者スーパーカードキュメント!
文:清水草一/写真:ランボルギーニ、ベストカーWeb編集部
■かつてアヴェンタドールSでブイブイいわせた私も今や還暦過ぎ……
今から7年前、富士スピードウェイにて、ランボルギーニのサーキット試乗会が行われた。その時乗った「アヴェンタドールS」は740馬力。ところが今度の「レヴエルト」は1015馬力! バケモノじゃん!
そのバケモノに、同じ富士スピードウェイで試乗することになりました……。
7年前は私もまだ元気で、スピードへの情熱をボーボー燃やしていたが、今は還暦過ぎ。すっかりヨボヨボである。一番衰えたのは目だ。白内障にドライアイのダブルパンチ! 加えて雨のトリプルパンチ!! そんなんで1000馬力を御せるのか!?
レヴエルトのスタイリングは、ランボルギーニ旗艦の文法に則った、忠実なるカウンタックの後継車である。もちろん伝統のシザーズドアは健在。これがなくちゃ始まらない。アヴェンタドールとあんまり変わってないとも言えるが、あんまり変わらないことは100%善。カウンタック系と911系はあんまり変わらないことに意義があるのでこれで善し。
試乗前のブリーフィングで、ペースカー付きであることが発表された。よかった……。
目の弱った還暦過ぎに1000馬力で自由に走らせたら大惨事の可能性がある。還暦過ぎるともう、自分の欲望(例:いっぱいスピード出したいな)などどうでもよくなり、人様に迷惑をかけないことが第一。ペースカーがいれば、1000馬力の真実を、安全かつラクチンに体感できるはずだ。
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■ハンドル切る前からノーズが切れ込む? ほどシャープなコーナリング
ペースカーの指示により、ステアリング左上のつまみを回して、まずはドライブモードを「チッタ(町)」にセットしてスタート。レヴエルトはPHEVなので、この状態では前後合計3基のモーターによる電動走行となる。聞こえて来るのは雨音と、タイヤが路面の水幕を弾き飛ばす音だけ。
「ランボルギーニもついに電動化か……」とお嘆きの諸兄もいらっしゃることでしょうが、バッテリー容量はわずか3.8kWh。普通のプリウス(PHEVじゃないほう)が3.6kWhなのでそれと大差なく、重量増加は最小限に抑えられている。ただし普通充電も可なのでPHEVなのだ。
コースインして「ストラーダ」モードに変更。同時に「バオーン!」とエンジンに火が入った。6.5リッターV12は最大出力825馬力、最大トルク725Nm! このパワーはすべて後輪に伝えられる。アヴェンタドールは純粋な4WDだったが、レヴエルトの場合、前輪を駆動するのはモーターのみ。エンジンに関しては後輪駆動に徹している。後輪駆動マニアとして大変喜ばしい。
ペースカーが徐々にペースを上げる。それに追従する還暦のオレにも不安はない。直進安定性は死ぬほど高いのに、ハンドルを切れば切る前からノーズが切れ込んでいくほどシャープに曲がる。ヘビーウェットでも!
最終コーナー手前でスポーツモードに変更。ペースカーが一気に速度を上げた。オレも負けじとアクセルを踏む。すさまじいエンジンレスポンス! 軽快かつ重厚にV12がブチ回り、この世のものとも思えない加速が始まった。スゲエ~~~~ッ!
しかし前が見えない……。水しぶきがすごすぎてペースカーがどこにいるのかぜんぜんわからない! コ、コワイ! 怖すぎる! こんな状態で還暦がこれ以上速度を上げるのはムリ! いったい今何キロなの? ええ~~~250km/hも出てる~! ぜんぜん踏めてないのに……。
怖いのでウルトラ早めにブレーキ開始。もちろんガツンじゃなくそーっと。それでもブレーキが恐ろしくしっかり効く。タイヤが路面に張り付いて離れない。クルマはウルトラ万全なのである。
■走行中に2つのダイヤルをクルクル回すだけでテンパる
続いてペースカーが「コルサ(レース)」モードへの変更を指示した。こっちもちょっと慣れてきたので、低速コーナー立ち上がりでアクセルをブリッと踏んでみる。ブリッとリヤが滑るが、コンマ1秒後くらいにフロントのモーターが引っ張って姿勢を立て直す。いったんリヤが滑ってからフロントの駆動が入るところが心憎い。ドライバーにスーパーカーらしいスリルを味わってもらうおうという親心だ。
後で聞いたところ、「トラコンを切らない限りドライではひたすら安定」とのことで、テールが流れるのは雨の時だけのようだが、雨の日にレヴエルトのアクセルを乱暴に踏むのはやめときましょうネ!
レヴエルトは、「チッタ(電動)」「ストラーダ(886馬力)」「スポーツ(907馬力)」「コルサ」の4モードに、ステアリング右のダイヤルを回すと「リチャージ(充電)」「ハイブリッド」「パフォーマンス」の3モードが組み合わされる。最強の「コルサ」×「パフォーマンス」の状態で、初めて1015馬力が解放されるのである!
と言っても、私には886馬力も1015馬力もぜんぜん区別がつかなかった。どっちもウルトラ速いとしか言いようがない。そもそも、走行中に2つのダイヤルをクルクル回すだけでテンパって、違うダイヤル(車高調整用とか)を必死に回したり、スマホが扱えない高齢者状態だった。
■ランボは「ドアを開けて止まってるのが華」じゃない!
しかしそれでも、レヴエルトのすばらしさは十二分に理解できた。
私は自分のカウンタックで富士を走ったこともあるが、あれは「ブレーキは効かないもの」くらいの心構えが必要な、片道切符なクルマだった。7年前に乗ったアヴェンタドールSも、開発されたばかりの4WSがイマイチ熟成されておらず、300km/hレベルでは不安があった。
そもそもランボルギーニV12は、回して楽しいタイプじゃなかった。カウンタックとその後継車たちは、シザーズドアを開けた状態で止まっていれば観客も一番喜ぶし、いろんな意味でベストだったのである。
しかしレヴエルトは違う。なによりも新開発のV12エンジンがすさまじくイイ。中回転から上ならどの領域でも猛烈に甘美に回りつつ、なんと9250rpmまで突き抜ける! それでいてランボらしい荒々しさも微妙に残されているのだから言うことナス!
ランボファンは、レヴエルトがPHEVになったことを嘆く必要はない。コイツはサーキットでも本気で走らせられるウルトラスーパースポーツだ。それでいて、深夜の住宅街から一般道まで、あらゆる状況で走りを楽しめる。もう「ドアを開けて止まってるのが華」じゃないヨ!
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