東京納品代行が日本トレクスと共同開発した新型トレーラが運行を開始した。衣料品物流の未来を見据えてユニークな機能を盛り込んだ新型トレーラの特徴とは? 運行直前の実車をレポートした!!

文/トラックマガジン「フルロード」編集部 写真/日本トレクス、トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年6月10日発売「フルロード」第53号より

前後で2分割されたユニークなボディを持つ新型トレーラ

東京納品代行が日本トレクスと共同開発した新型トレーラ

 東京納品代行は衣料品に特化したセンコーグループの物流会社で、百貨店への納品代行業務を中心に、衣料品に関するさまざまな物流事業を国内外で展開している。新型は、そんな同社の物流事業の未来を見据えて開発されたもので、「ファッション・フューチャートレーラ(FFT)」というニックネームが与えられている。

 FFTはトレーラ全長13m級の2軸車で、低床化のため段付きフレームを採用するのが特徴。ここに15インチ小径タイヤを組み合わせることで、975mmの床面地上高を実現する。この975mmというのは、小型/中型トラックを主力とする同社の物流センターのプラットホームの高さに合わせたものである。

 ボディが前後で2分割されているのも大きな特徴で、前側はウイングボディ、後ろ側はバンボディを採用。ウイングドア+アオリを組み合わせた前側は、通常のウイングボディと同じ使い方が可能で、ネット通販で取り扱われる箱詰めされた製品や、コンビテナーと呼ばれるキャスター台車などに対応。もちろんパレット製品のフォークリフト荷役も可能だ。

 一方、バンボディ構造を採用する後ろ側は、側面のラッシングレールに専用のバーを取り付けることで、同社が得意とする高級アパレル製品のハンガー輸送に対応。前後のボディの中間に設けられた門型フレームは、ボディを前後で分割する役割のほか、このハンガー輸送時にボディがたわむのを防ぐ役割もあるのだという。

 ちなみに後ろ側のバンボディは、全体がガバっと開くフルウイングボディをボルトで固定して開かなくしたものである。高級アパレル製品輸送がメインの現在は、隙間から雨水などが入って製品を汚すのを防ぐため完全に密閉されているが、将来、パレット製品などを運ぶことになった場合にはボルトを外し、フルウイングボディとして運用することもできる。

 もしかしたら「なんでそんなややこしい構造に……?」と思うかもしれないが、トレーラは車両寿命が長く、10年、20年先にどのような輸送形態が主流となっているかわからない。これは、あらかじめさまざまな輸送形態に対応できるようにしておくことで、将来の長きに渡って車両を活用するための、同社ならではのアプローチなのである。

 なお、今回のFFTとは直接のつながりはないものの、日本トレクスでは1998年開催のトラックショーに「2室温度管理ウイングトレーラ」というボディ前後を分厚い壁で分割したトレーラを開発している。

同社初のトレーラの運行体制は?

前側ウイングドア+アオリ、およびリア観音ドアを開いたところ

 東京納品代行が導入したFFTは合計4台で、関東に2台、関西に2台が、それぞれ配備されている。ドライバーは関東と関西で合計10名(各5名)で、関東/関西〜浜松間の幹線輸送と、日中の集荷業務を、交代で行なっている。すべてを1人で行なうのは、労働時間の制限が厳しくなった現在ではむずかしいのだ。

 幹線輸送は20時〜21時に出発し、0〜1時に浜松でトレーラを交換し、5〜6時に戻ってくるというサイクルで運行。往復の走行距離は関東/関西とも約500kmで、日をまたぎはするものの、車中泊をすることはなく、毎日家に帰ってこれるという。

 中継拠点は現時点では「浜松トラックステーション」を使っているが、現在、親会社のセンコーが浜松サービスエリア付近に独自の中継拠点「TSUNAGU STATION浜松」を建設しており、TSUNAGU STATION浜松の開設後(今年8月の予定)は、FFTのトレーラ交換もこちらで行なうようになる予定だ。

 なお同社では、初のトレーラを導入するにあたり、ドライバーの教育にも注力したそうで、FFTを運転する10名のドライバーは、約1カ月の実務研修を経てセンコーグループ独自の乗務認定を受けているという。このあたりはトレーラの実績豊富なセンコーグループの知見が活かされた形だ。

 なお、センコーグループは今後もトレーラ導入を加速させる予定で、今年4月には2030年までにだダブル連結トラックを100台導入するという方針を掲げている。東京納品代行もさらなるトレーラを図ることになるのか? 今後の動向にも注目だ。

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