トヨタのセダンといえば、カムリを思い出す人も多いはず。一見おとなしいイメージだが、実はカムリはトヨタのスポーツクーペから生まれた派生車なのだ。そのスポーツクーペとはいったい何?

文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ自動車

■カリーナセダンから生まれた初代カムリ

「セリカ カムリ」を名乗った初代カムリ

 トヨタを代表するFFセダン、カムリ。2023年11月には11代目がデビューしたが、セダンの不振を受けて、日本では市販されない海外専用モデルとなってしまった。

 そんなカムリだが、1980年にデビューした初代は、バリバリな硬派モデルだったことをご存知だろうか。そもそも名前からして違う。初代カムリは「セリカ カムリ」としてデビューしたのだ。つまりセリカの兄弟車だったのである。

 昭和世代の方なら、当時のセリカはカリーナと兄弟関係にあったことをご存知のはず。そこになんでカムリが割って入ったのかといえば、当時の販売チャンネルが関係している。

 1970年代末のトヨタは、カローラ店の販売力を強化すべく、カローラよりも大きなセダンの投入を目論んでいた。実はそのためにすでにビスタが開発中だったのだが、問題は手頃なクルマがメインのカローラ店で、ちょっとお高めのセダンが売れるのかということ。

 そこでトヨタは観測気球を打ち上げることにした。セリカの兄弟車としてトヨタ店で販売されていた2代目カリーナの輸出仕様をベースに、FRセダンを仕立てたのだ。これこそがセリカ カムリである。

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■ビスタが登場するまでの中継ぎ的存在?

FFレイアウトで広い室内を実現した初代ビスタ。セリカ カムリはこのクルマのための中継ぎだった

 こんなわけだから、セリカ カムリの外観はほぼ輸出仕様の2代目カリーナそのまんま。デザイン的に違うのはリアだけで、サイドに回り込んだテールランプが個性だった。

 エンジンもカリーナの流れを汲み、1.6と1.8の直列4気筒を縦置きに搭載。その7か月後には新型エンジンを積む1.8Lと2Lツインカムモデル(2000GT)が加わり、こちらはカリーナにはない4輪独立懸架、4輪ディスクブレーキを採用した。

 こうして登場したセリカ カムリは侮れない走りを示し、カローラ店の新しいフラッグシップとして存在感を誇った。その結果カローラ店での上級セダン市場開拓に大きく貢献したのだが、この時にはすでに本来の主役であるビスタが完成し、発売をいまや遅しと待っていた。

 結果、セリカ カムリは発売からわずか2年2カ月で、2代目カムリ(=初代ビスタ/販売はビスタ店)にバトンを渡してしまう。この2代目カムリはパッケージングに優れたFFレイアウトを採用し、初代セリカ カムリとは比べ物にならない室内の広さを実現していた。

 ビスタ誕生までの一瞬の期間を駆け抜けたセリカ カムリ。カムリが北米の大人気セダンとなった現在でも、忘れてはならない歴史的希少車といえるだろう。

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