2024年3月にアメリカが「中国製BEVの輸入関税を100%に上げることを検討する」と発表し、早くも8月から施行する。早ワザに驚いたのもつかの間、今度は中国製コネクテッドカーの規制も始めるという。アメリカが懸念する中国製コネクテッドカーの危険性とは?
※本稿は2024年6月のものです
文:国沢光宏/写真:AdobeStock(トップ画像=chartphoto@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年7月10日号
■日々厳しくなるアメリカの中国車規制
アメリカの中国対応は厳しくなるいっぽうである。
2024年3月中旬に「中国製電気自動車の輸入関税を100%に上げることを検討する」と発表したと思ったら、早くも5月14日に正式決定! 8月から施行するという。突如出てきた内容があっという間に決まる異例の展開だ。自動車業界を45年くらい見てきたけれど、ここまで早い対応は知らない。
驚いていたら、今度はコネクテッドカーの規制も始めるという。
コネクテッドカーとは何か? 一番わかりやすいのが、オンラインでクルマのソフトを変更できること。
皆さんも、使っているPCが勝手に再起動されることがあると思う。オンラインで新しいソフトを上書きしているのだった。すでに同じことをテスラはやっています。
当然ながらメーカーはクルマの情報も吸い上げられる。
年間走行距離などはもちろん、移動速度、どこに行ったのか、ドライバー向けのカメラを付けたクルマなら誰が運転していたか、外側向けのカメラから得られる情報だって大きい。機密保持区域の動画すら撮れてしまう。中国製のハードやソフトを使っていれば情報が中国に漏れる。
読者諸兄もSNSやPCで見た情報に関連する商品広告や情報がたくさん出てくることを経験していると思う。今や行動や趣味、嗜好はダダ漏れなのだった。
普通の人であれば、だからといって困ることもない。けれど政府系の仕事や、機密に関連している仕事の人だとそうもいかない。社内会話を含めすべての情報を抜かれてしまう。
アメリカはその点を危惧しているのだった。文頭の中国製電気自動車の100%関税もその流れ。続いてコネクテッドカー規制を打ち出してきたということです。ここまで読んで「100%規制をすればもう心配ないのでは?」と思うかもしれない。
ところがどっこい! 中国はメキシコに工場を計画している。生産したクルマは、アメリカで売る。
アメリカとメキシコは貿易協定があり、メキシコからの自動車輸入に対し税金を掛けていない。したがって中国勢もメキシコ工場で生産すればアメリカに入ってくる可能性がある。
そいつを何とかしようというのがコネクテッドカー規制なのだった。クルマをチェックし、中国製の半導体やCPUなどが使われていた時点でアウト判定。
どういった対応を取るのか検討中ということだけれど、100%関税より厳しい輸入禁止措置になる可能性が大きいという。アメリカ、ホンキで中国の閉め出しに動き出した。間に挟まれた日本はどうする?
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