バブル経済真っ只中の1988年、当時国内最強270馬力を誇るスープラターボA(JZA70型)が限定500台で発売された。対するフェラーリ328GTSは奇しくも同じパワーの270馬力! そこでベストカーはこの2台を谷田部テストコースに持ち込んでフルテスト! はたしていどちらが勝ったのか? 1988年10月26日号の記事を振り返ってみたい。

※本企画はベストカー1988年10月26日号の記事から抜粋したものです

文:ベストカー編集部、黒沢元治/写真:ベストカー編集部、トヨタ、フェラーリ

■270馬力のスープラターボAとフェラーリ328GTSを谷田部テストコースでテスト!

ベストカー1988年10月26日号より

 なんたって、270馬力はスゲエ! 国産車最強のパワーを持って登場したスープラターボAはたった500台ぽっちといえども、ポクたちに250km/hオーバーの夢を見させてくれるに違いない。

 しかも、背を伸ばせば手が届きそうな405万円という値段である。こいつがあれば、もう外車にデカい顔をさせないぜい。

 というわけで、興味津々のスープラターボAの谷田部でのフルテストというわけなのである。しかも、今回、谷田部に持ち込んだのはターボAだけじゃない。ライバルとして登場願ったのはなんと、フェラーリ328GTS。

 フェラーリが作った秀作、328GTSのパワーは奇しくもターボAと同様の270馬力。フェラーリとしてはベストセラーカーだから、公道上でターボAと相まみえる機会もあることだろう。その路上で展開されるであろう対決を早くもシュミレーションというわけである。この激突の結果はいかに?!

全日本ツーリングカー選手権のホモロゲーションモデルのスープラターボA。外観の特徴はフロントバンパーセンター部に設置された3連ダクト

■0~400mは13秒台が出るか?

同じ270馬力だが価格はスープラターボAが405万円、フェラーリ328GTSが1552万円(1988年当時)

 スープラターボAのアイドリング音はノーマルの国産車とは思えない野太いもの。ボボボ……、と、いかにも270馬力を主張しているようで妙に頼もしい。しかも、ブリッピングするとブーウォ〜ッという排気音の変化とともにウエストゲートのプッシューなんて音が混じって鳥肌たっちゃいそう。

 計測用のオノビットを装着したターボAはいよいよコースヘ向かう。コースはすべてクリア。しかし、路面は濡れている。テスト直前まで降っていた雨はなんとかやんだが、路面が乾くまでにはいたってないのだ。

 水たまりが目立つほどではなく、アスファルトの色が黒く見える程度のウエット路面だが、270馬力のクルマにとって、ドライ路面との差が大きいことは想像に難くない。テスターの黒沢元治の顔も険しくなりっばなし。

スープラターボAのコクピット

 ブアーツ、バキッ! キュキュキュ……、激しいホイールスピンとスキッド音を残して発進するターボA。セカンドにシフトするときもホイールスピンしている時間が心持ち長く感じられる。

 しかし、サードに入ってからの加速は圧倒的。グングン400m地点へ近づく。0〜400mのタイムは14秒64。スープラはさらに1000m地点へ。1000m地点でのタイムは26秒38。ウエット路面としては抜群のタイムだ。

 コントロールタワーヘ戻ってきたガンさんはこういう。「13秒台を狙ってたのに、このウエット路面は残念。スタートのとき、いつもは4500回転くらいでクラッチミートするのに、今日は3800回転が限界だった。それでもホイールスピンがすごいから、アクセルコントロールはかなリシビアだな。でも、ウエットで14秒64ってのは抜群のタイムじゃないか」。

 やはり270馬力を生かすにはドライでないとムリがあるようだ。続いて328GTSがスタート地点へ。スープラに比べて、クォン!という乾いたサウンドがいかにもF1の血統を感じさせてとっても魅力的。

 ミドシップというエンジンレイアウトのためトラクションが「いいフェラーリはほとんどホイールスピンもせずにスタートラインを切った。クオーンという気持ちいいサウンドを発して駆け抜けた400m地点のタイムは14秒47。

 スープラより0.17秒速い。見ていてもスピードに乗っているのが明らかにわかるほど。そして、1000地点でのタイムは26秒15とこれまたスープラに0.23秒の差をつけるという結果に。

フェラーリ328GTS。ピニンファリーナによるデザインは美しい

 「328GTSはミドシップだけにトラクションがよかった。エンジン回転が4300ぐらいでクラッチミートしても、ほとんどホイールスピンせずに、グンッと背中を押されるようにスタートしてくれた」というのがガンさんの弁。

 ちなみにドライだったらどうなるか? というのを予想してもらったら、「ドライだったら、スープラも328もあまり変わらないタイムだろう。おそらく、14秒フラット近くまではいくはず。今日はスープラがFRということもあって、やや不利な条件ということ」ということだった。

 加速については両車、ほぼ同じということだろう。それにしても、スープラも328も1000m地点で200㎞/hオーバーなのだから、とにかく速いのひと言につきる。

328に搭載されるエンジンは3186㏄、V8NAで270ps/31.0kgmを発生

 同じ270馬力といってもターボAと328GTSのパワーユニットはまったく別もの。ターボAは7M-Gのチューニング版で直6の24バルブ+ターボ。排気量は2954㏄で270ps/5600rpm、36.5kgm/4000rpm。それほど高回転型ではなく、回転数だけみていると実用エンジンに近い。

 いっぽう、フェラーリ328は4バルブヘッドを持つ90度V8、排気量は3186㏄で、270ps/7000rpm、31.0kgm/5500rpm。NAでターボと同じパワーを出すという高回転型ユニットなのである。

 両車の細かい加速性能については表を参考にしてほしいが、ちょっとずつフェラーリがリードしているものの、その差はほんのコンマ数秒。ここまで同じようなタイムの例は珍しく、いかに両車が好敵手かわかろうというもの。フェラーリは速い、しかしスーブラもなかなかやるぜというのが結論。

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■なんと、最高速もわずか0.1km/h差

スープラターボAに搭載される2954㏄、直6ツインターボは270ps/36.5kgmを発生

 続いて最高速の計測に入る。0~400mを行なっているうちに路面はどんどん乾いてきており、ほとんどドライといってもいい状態になってきた。この状況なら最高速に関してはドライと変わらないデータが期待できる。

 まずバンクに向かうのはスープラ。全開で加速しながらバンクに消えていったスープラが裏のストレートにさしかかると、ジェット機のようなキーンという音がコントロールタワーまで聞こえてくる。

 そして南バンクから姿を現したスープラはあっという間にスタッフの目の前を通過。速いッ! 肉眼でも楽々と240㎞/hをオーバーしているのがわかるほどのスピードで目の前を通過したスープラは、再び北バンクヘ突入。そしてアッという間に南バンクから姿を現した。想像以上の速さだ。再び目の前をキューンと通過。無事に計測終了。

 コントロールタワーに戻ってきたスープラにスタッフが駆け寄る。計測器オノビットのプリンターからはカタカタとデータがプリントアウトされてきた。

 そして最高速は255.2㎞/h!これはすごい! 250㎞/hオーバーは国産車としてはもちろん初。ターポAは260km/hにも手が届きそうなスピードを発揮したのである。

 続いて328GTSが最高速に挑戦する。スープラよりひと回りほどボディが小さい328は、スープラのド迫力とはちょっと違った、空気を切るような感じで目の前を通過。クールダウンしてスタッフの元へ。

 328のマークしたスピードは255.1km/h。これまた速い。3.2LのNAとしては驚くべきスピードである。やはりフェラーリらしいスピードともいうべきだろう。

 スープラとフェラーリの差はわずか0.1km/h。加速と同様、これまたいい勝負である。ただし、「フェラーリは1周しか計測しなかったけど、もう1周していれば2~3km/hは最高速が伸びていたと思う」とガンさんも語っており、最高速でもややフェラーリが速いということだろうか。ただし、その差はほんのわずかである。

 また最高速域での両車の安定性については、「ストレートは250km/hで走っても、両車とも安定していてまったく問題ない。バンクはフェラーリはピッタリ吸いついて走るような感じに比べ、スープラはハンドリングがやや落ちつかない、といったところかな。まぁ、スープラはロールセンターも高いからしかたないところで、恐いほどのもんじゃない」。

 性能的にはフェラーリがややリードしているが、スープラターボAもターボの力を借りてフェラーリに充分、追従できるだけの性能を持っていることが証明されたこのテスト、これからはターボAに乗っていれば、とりあえず、ライバルはほとんどいない!

※       ※       ※       ※

 いががだったでしょうか? スープラターボAが270馬力で登場した1988年当時は、まだ280馬力自主規制はありませんでした。その上限値280馬力が認可されたのが、1989年7月に登場したZ32型フェアレディZが自主規制の基準となりました。スープラターボA登場はその前夜ということになりますね。

 280馬力までという自主規制は、当時の運輸省(現国土交通省)が、自工会(一般社団法人日本自動車工業会)に、国産メーカーの間で繰り広げられていた過激なパワー競争を抑制するよう、提言したことがきっかけでした。2004年登場のレジェンドが300馬力超となり、280馬力自主規制は終焉を迎えます。

 ところで、この2台を今買えるのでしょうか? 大手中古車情報サイトを検索してみるとスープラターボAは5台流通しており、価格は330万~1350万円と限定500台ながら1350万円の個体を除けば思ったほど高騰していません。

 いっぽう、フェラーリ328GTSの流通台数は8台ほどで価格は1300万~1850万円。一時期ほど暴騰していないが高値傾向は続いています。

■トヨタスープラターボA
ボディサイズ:全長4630×全幅1745×全高1300mm
ホイールベース:2595mm
車両重量:1540kg
エンジン:2954㏄、直6ツインターボ
最高出力:270ps/5600rpm
最大トルク:36.5kgm/4000rpm
サスペンション前/後:Wウィッシュボーン/Wウィッシュボーン
タイヤサイズ前/後:225/50R16
車両本体価格:405万円(限定500台)

■フェラーリ328GTS
ボディサイズ:全長4255×全幅1730×全高1130mm
ホイールベース:2350mm
車両重量:1425kg
エンジン:3186㏄、V8NA
最高出力:270ps/7000rpm
最大トルク:31.0kgm/5500rpm
サスペンション前/後:Wウィッシュボーン/Wウィッシュボーン
タイヤサイズ前/後:205/55VR16/225/50VR16
車両本体価格:1552万円

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