3月下旬に新しい経営計画「The Arc」を発表した日産自動車。その発表会の録画を見ていたら妙なことに気付いた。途中で紹介されたクルマの製造工程が明らかにヘンなのだ。日産は何するつもりなんだ?

文/ベストカーWeb編集部、写真/日産自動車

■シートまで先にくっつけちゃう新日産生産方式

The Arcに付いて説明する日産の内田誠社長(同社YouTubeより)

 3月25日、日産が新しい中長期の経営計画「The Arc」を発表した。発表会の途中では、これからデビュー予定のリーフやらエルグランドやらがシルエットで紹介されたりして多いに盛り上がったが、他にも見どころがあった。新しいクルマの作り方だ。

 YouTubeのアーカイブ映像では20分過ぎから、内田社長がその作り方について説明している。「新日産生産方式」と銘打ったこの技術は、まったく新しい構造の次世代EVに採用されるという。

【中継】The Arc: nissan 経営計画

 具体的になにが新しいのか。

 これまでの内燃機関自動車は、まず車台を置き、その上にモノコックボディを載せて全体骨格を作ってから、エンジンや足回り、内装部品をその中に組み込む手法だった。

 ところが映像で分かる新しい方法は違う。はじめに前輪と後輪の間、キャビン部分の床に畳のようなバッテリーモジュールだけを作る。日産はここをセンターユニットと呼んでいるが、驚くのは次だ。

 普通ならこのセンターユニットの前後に、クルマのフロントセクションとリアセクションを組み付けて車台を完成させる。

 ところが新日産生産方式ではバッテリーは四角い畳のまま。そこへ内装材を敷き、その上にセンターコンソールやシートを先に組み付けてしまうのだ。ボディを後回しにして内装を先に作るプラモデルの要領である。

 映像によれば、その次にようやく畳状のバッテリーが前後サブフレームと合体され、足回りや駆動ユニットが組み付けられる。その後に初めてボディがカパッと被せられるのだ。繰り返すが完全にプラモデルである。

■テスラの生産方法と共通点が

車体を6つのモジュールに分けて作るテスラのアンボックスドプロセス(Tesla YouTubeより)

 これに似た作り方を過去に見たことがある。テスラが2023年3月に公開した、「アンボックスドプロセス」と呼ばれる工法だ。

 具体的にはクルマを「フロントボディ」「フロア」「リアボディ」「左アッパーボディ」「右アッパーボディ」「ドア/フード」という6つのモジュールに分け、これをそれぞれほぼ完成(塗装までする)させてから組み付ける。

 テスラはこの製法でEVがパソコンのように組み立てられるといい、圧倒的なコストダウンを実現するとアナウンスした。

 おそらく日産が狙っているのも同じことだろう。日産の内田社長はとりわけこの製法による生産時間が短縮されると強調しており、台当たりの生産時間が現在よりも20%短くなると述べていた。

 このまったく新しい「プラモデル生産方式」で生産される新型EVは、2027年に姿を現す。コストダウンはもちろんだが、なにより走って楽しいクルマであることを願いたい。

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