長野県茅野市聖光寺で夏季大祭が開催され、トヨタグループ17社の首脳や販売会社、地元の観音講の皆さんが一緒になって交通事故ゼロへの祈りをささげた。モリゾウさんも参拝し、交通安全の思いを語るとともに気になるF1についても言及した
文:ベストカーWeb編集部/写真:長谷川智哉、ベストカーWeb編集部
■トヨタ自動車が交通安全のために建立した聖光寺
蓼科山聖光寺は1970年トヨタ自動車販売の神谷正太郎社長が中心になり、全国の販売会社に呼びかけ、交通事故で亡くなった人々の霊を慰め、負傷者の早期の回復と交通事故ゼロを願って建立された。
当時は高度経済成長のおかげで、自動車の保有台数が毎年200万台規模で増える一方、1970年の交通事故死者数は年間1万6765人、負傷者数は98万1096人にのぼり、「交通戦争」という言葉が生まれるほど交通事故は社会問題になっていた。
交通事故が起きるたびにクルマは悪だという感情が生まれ、聖光寺を創る際も「神仏頼みかよ」と言われるような状況だった。
その後自動車の技術が向上し、社会インフラの整備、法律や交通ルールの周知などが進み交通事故者数は減少していった。
その間も聖光寺の夏季大法要は毎年欠かさず7月18日に開催され、交通安全の祈りをささげてきた。多忙なモリゾウさんも二十数年間にわたって出席し、交通事故ゼロへの誓いを新たにしてきた。
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■2023年の交通事故死者数、重傷者数はともに増加
ずっと下がり続けてきた交通事故死者数が2023年は2678人と2022年よりも68人増加し、重傷者数も2万7636人と1609人多くなった。また人身事故の件数も30万7930件と7091件増加した。
交通事故死者数や重傷者数、人身事故件数が増加に転じたという事実は、改めて「交通事故をどうしたら減らせるのか?」 を考えさせるものだった。
モリゾウさんも「人、クルマ、交通環境の三位一体になって取り組んでいくことでしかさらなる削減は難しいのではないか」と話す。
確かに自動車側から見れば三点シートベルトやエアバッグ、横滑り防止装置、衝突被害低減ブレーキといった安全技術の進化が交通事故者数や重傷者数を減らす大きな要因になってきた。
しかし、さらに交通事故を減らすためにはクルマの技術の進化だけでは難しいのではないかと思う。やはりインフラの整備と人の意識を変えることが重要になってくる。
昨今の特徴として挙げられるのは、自転車や歩行者の死者数が増える一方、クルマに乗車中に事故に遭い、亡くなる方は減っていることだ。
特に自転車と歩行者の衝突による死者と重傷者数は2023年の数字で全体の4.9%に上り、2013年が3.4%だったことを考えると大きく増えていることがわかる。
自転車ではないが、電動キックボードは普及とともに事故の増加が懸念される。
交通事故を減らすには、ドライバーも自転車も歩行者もそれぞれが思いやりの気持ちを持つことが何より大事。聖光寺で交通安全を祈ることは思いやりの気持ちを忘れないということでもあるだろう。
モリゾウさんは「交通安全のルールやインフラの整備はみんなで考え、作っていくもの」というが、産官学が結集する形で新しい交通安全への意識づくりができたらいいなと思う。
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■モリゾウさん、F1復帰はあるんですか?
「トヨタがF1復帰か?」という一部の報道についても聞いてみた。「わたしがいますからね」がその答え。そして「やめた張本人ですからね」と続けた。
モリゾウさんはF1がドライバーやエンジニアたちの大きな目標であることを認めつつ、現場を重視するモリゾウさんにとってF1は肌が合わない。モリゾウさんの言葉を借りれば「居場所がない」となる。
社交よりも現場、お偉いさんたちと談笑するよりも、ピットでドライバーやチームを激励していたい。いかにもモリゾウさんらしく、トヨタがコンストラクターとしてF1に復帰することは当分なさそうだ。
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