警察庁では、運転免許証とマイナンバーカードの一体化に関する運用を、2024年度(令和6年度)末までに開始する予定だと公表しています。
同庁によれば、これにより、免許更新時の利便性などが向上するとのこと。では、具体的に、運転免許証とマイナンバーカードの一体化とはどういったもので、どんなメリットがあるのでしょうか? また、マイナンバーカードを持っていない人や、紛失した場合はどうなるのかなども気になるところ。これらについて、まだ、詳細は発表されていませんが、現在分かる範囲で検証してみます。

  文/平塚直樹 Webikeプラス   

運転免許証とマイナンバーカードの一体化とは?

 運転免許証とマイナンバーカードの一体化とは、運転免許証のICチップに入っている免許固有の情報を、マイナンバーカードのICチップへ記録するというものです。

 

 

 この一体化については、2022年(令和4年)4月に、道路交通法の一部が改正され、以下のような規定が盛り込まれました。

 「運転免許を現に受けている者のうち、当該運転免許について運転免許証のみを有するもの等は、いつでも、その者の個人番号カードの区分部分に当該者の運転免許に係る一定の情報(以下「特定免許情報」という。)を記録することを申請することができることとする。

特定免許情報が記録された個人番号カードは、運転免許証の携帯及び提示義務に係る規定の適用については、運転免許証とみなす。」
(出展:参議院ホームページ 議案情報「第208回国会(常会)議案要旨」)

 ご存じの通り、ここでいる個人番号カードがマイナンバーカード。これら条文を簡単にいえば、運転免許証を持っている人は、その人の免許情報(特定免許情報)をマイナンバーカードへ記録する申請ができるということ。

 

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 つまり、運転免許証の情報を紐付けしたマイナンバーカード1枚で、免許の種類や番号、交付年月日や有効期間などの情報が分かるということです。

 要するに、現在すでに運用が開始している保険証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ保険証」のような感じで、いわば「マイナ運転免許証」にすることができるということですね。

 

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一体化のメリットとは?

 では、この運用が開始されると、どんなメリットがあるのでしょうか?

 まず、条文の後半に「運転免許証とみなす」とあるため、マイナ運転免許証は、運転免許証と同じ扱いになります。つまり、運転する際、運転免許証と一体化したマイナンバーカード1枚のみを携帯していればよく、運転免許証がなくても違反にならないということです。

 2枚が1枚になる……ポイントカードやクレジットカードなど、なにかと持ち歩くカード類が多いことを面倒だと感じている人にとっては、メリットだといえますね。

 また、警察庁では、以下のようなメリットも挙げています。

1,住所変更手続のワンストップ化ができる
2,居住地外での迅速な運転免許証の更新手続などが可能
3,オンライン更新時講習を受講することができる

 1は、引っ越しなどで住所が変わった場合の手続き。現状では、運転免許証は警察署や運転免許センターなどで、マイナンバーカードは市区町村の役所・役場で行うことになっています。それが、もし一体化すれば、手続きの窓口を役所や役場に統一できることが予想できます。

 2は、例えば、仕事などで長期の海外赴任をしていて、一時的に帰国した際に、運転免許証の更新を行う場合が考えられます。

 基本的に、免許証の更新は、住所地を管轄する公安委員会において行うことになっています。ただし、海外に滞在中などで、外国に生活の本拠があり日本に住所のない人が、一時帰国した際に日本の免許証を更新する場合には、一時滞在先(親や親戚の家など)を住所地として、免許証の更新を行うことができるようになっています。

 ただし、この場合も、運転免許センターなどに行く必要があるのですが、もし一体化すれば、市区町村の役所や役場で行うこともできるでしょう。その場合も、ゴールド免許を持つ優良運転者に限られるなど、一定の要件はあるかもしれませんが、遠くにある運転免許センターなどに行くよりも、便利になることが考えられます。

 3は、これも警察庁が2024年末までに運用開始を目指しているオンライン更新時講習を受けられるようになるということです。

 このオンライン更新講習とは、2022年(令和4年)2月から、北海道、千葉県、京都府、山口県で試験的に実施されているモデル事業のことです。

 優良運転者や一般運転者でマイナンバーカードを保有する人を対象に、免許更新時の講習をスマートフォンやパソコンで受講できるというものです。自宅や仕事場など好きな場所で、24時間好きな時に受けられることで、免許更新時の利便性を向上しようという取り組みです。

 警察庁では、この運用を、前述の通り、2024年末までに全国に拡大することを進めていて、もし実現すれば、マイナ運転免許証を取得することで、このサービスも受けることも可能となります。

 

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 ただし、もしオンライン更新時講習を受けたとしても、現状では、新しい運転免許証の交付を受けるには、従来と同じく更新期間内に運転試験場などに行く必要があります。その意味では、この制度は、あくまで講習の受講を好きな時間に受けられることがメリットだと考えた方がいいかもしれません。

一体化は義務? マイナンバーカードがない場合は?

 では、運転免許証とマイナンバーカードは、絶対にやらないとダメなのでしょうか? 特に、マイナンバーカード自体も取得は任意のため、持っていない人もいますが、そういった人の場合はどうなるのでしょうか?

 前述した改正道路交通法の規定には、「申請することができる」とあるため、基本的に一体化も任意だといえます。つまり、選択肢としては、

1,今まで通り運転免許証を使用(一本化しない)
2,マイナンバーカードに一本化

 ということが考えられます。また、ひょっとすると、

3,免許情報を入れたマイナンバーカードと、従来の運転免許証の2枚持ち

 といったことも可能となるかもしれません(詳細が発表されていないので、あくまで推測ですが)。

 なので、そもそもマイナンバーカードを持っておらず、今後も取得するつもりがなければ、1のように、今まで通り運転免許証を使えばいいことになります。

 ただ、ここで気になるのが2の場合。もし、一体化したマイナンバーカード1枚持ちにして、そのカードを紛失してしまうと、再発行されるまで運転ができないことになります。

 マイナ保険証でも、再発行には自治体にもよりますが、1か月程度かかるケースもあるようです。そのため、通勤や通学、仕事など、日常的に運転するライダーの場合は、もし紛失すると、長い期間運転できない可能性も出てくるでしょう。

 そのため、もし一体化するにしても、3のような選択肢を選べるようにしてもらいたいですね。

 

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 繰り返しになりますが、この制度については、まだ、警察庁から詳細の発表がないため(2024年7月18日現在)、まだ不明点も多いのは確かです。といっても、警察庁が公表している通り、本当に2024年度末までに運用を開始するのであれば、あと半年を切っており、もう時間はあまりありません。一般のライダーやドライバーが制度をよく理解するためにも、できるだけ早急に詳細を明らかにして欲しいですね。

 あと、もし実施するのであれば、マイナ保険証であったような「他人の情報が誤って紐付けされた」などのトラブルは絶対に避けて欲しいですね。加えて、紛失した場合のスピーディで円滑な再発行など、利用者に「本当の利便性」をもたらす制度設計にして欲しいと思います。

 *写真はすべてイメージです

 

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