高速道路の追い越し車線を走っていると、流れに乗らず、後ろが詰まっているのにもかかわらず、ずっと居座り続けているクルマによく出くわす。おもむろにパッシングをしたいところだが、近年の煽り運転と受け止められかねないので、どうしたらいいものか?

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(トビラ写真:satoshi.o@Adobe Stock)

■追い越し車線を走り続けること自体が違反

新東名120km区間。追い越し車線に居座り続ける軽自動車(takadahirohito@Adobe Stock)

 2車線以上ある高速道路の追い越し車線をずっと走り続け、後ろからクルマが来ても譲るどころか、まるでブロックするように居座り続けるクルマが多いこと多いこと。筆者はアメリカ、欧州各国、北欧の高速道路を走ったことがあるが、追い越し車線を居座り続けるクルマがこれだけ多いのは、日本だけの特徴といえるかもしれない。

 なかには追い越し車線を走り続けていても法定速度を守っているから何が悪いんだと主張する人もいるだろう。これは大きな間違いだ。そもそも追い越し車線を走り続けること自体が「通行帯違反」に当たるからだ。

 道路交通法では、「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければいけない」と明記されており、通常は走行車線を走り、追い越し時には追い越し車線を使って前走者を追い越した後、走行車線に戻るのがルールなのだ。

 追い越し車線を走り続けると、例え法定速度以内であっても、「通行帯違反」となり、違反点数1点で反則金6000円が科せられる。ではどれくらい追い越し車線を走り続けると捕まるかだが、おおよそ2km程度が目安となっている。

 2024年6月28日、チューリッヒ保険会社が「2024あおり運転実態調査」を発表した。興味深い内容だったので引用させていただいた。

 遭遇したあおり運転については、「激しく接近し、もっと速く走るように挑発してきた」が76.5%と最多となり、続いて「必要のないハイビームをされた」が22%。また、あおり運転をされた際にとった行動としては「道を譲った(44.3%)」「何もしなかった(32.5%)」と、あおり運転をやり過ごしたドライバーが目立つ結果となった。

 驚いたのは、あおり運転をされたきっかけについて、思い当たることがない人が76.3%と想像以上に多かったこと。「思い当たることがある」と答えた人にきっかけと考えられる運転行動を聞いたところ、「制限速度で走っていた(26.3%)」「スピードが遅かった(17.9%)」と続き、あおり運転のきっかけと考えられる行動は、運転速度に関するものが多い結果となったという。

 このアンケート結果を見てみなさんはどう思いましたか? 「あおり運転をされたのに思い当たることがない人は76.3%」とあおり運転をされた理由がわからない、理由に気づいていないという人がこれだけいるのには驚かされた。どれほど鈍感なのか、鈍感だからあおられるのか……。

■「あなたのクルマを追い越したい」という意志をわかってほしい!

後方をよく見てほしいと感じることは多い(satoshi.o@Adobe Stock)

 高速道路の追い越し車線を走行中、後続車から一度パッシングされたからといって、後続車に道を譲らなければいけない、というルールはない。

 しかし異常接近してきたドライバーは、前走車にもっと速く走ってほしい、走行車線に移ってほしいというという意思と、イライラした気持ちになっているのは間違いない。あまり火に油を注ぐようなことはせず、早く気付いて道を譲ったほうがいい。これをそのままスルーして追い越し車線を走り続けていくと、あおり運転につながる場合も多いので冷静にお願いしたい。

 居座り続けるクルマが、なかなか退かない場合はどうすればいいのか? 追い越し車線から走行車線に移ってある程度走り、ころあいを見計らってそのまま走行車線で追い抜く方法。つまりクルマが進路を変えずに前走車の前に出る追い抜きということ。

 よくありがちなのは、追い越し車線で前走車に追いついて、すぐに走行車線に移っての追い越し。これは、左側からの追い越しと判断されて「追い越し違反(先行車両の左側からの追い越し)」となり、違反点数2点、反則金9000円となるので要注意!

■パッシングや右ウインカーは?

 パッシングについては、道路交通法52条第2項を見ると、車両の灯火に関する記述があり、他の車両等の交通の妨げになる場合には灯火を消したり光度を減らしたりする必要がある。

 過剰なパッシング行為は「滅光等義務違反」(車両のライトを無闇に明るくして走行を妨げる事)にもなるし、後ろから追走してハイビームを照らし続ける行為もあおり運転に該当するので注意が必要だ。ちなみにウインカーレバーを奥へ倒すとハイビームが点灯し、手前にひくとパッシングになる。

 最後に繰り返して言いたい。高速道路での追い越し車線を走り続けることはやめてほしい。これは通行帯違反。後続車が来ていても法定速度をしっかり守っているのだから自分が正しいという人も、速やかに走行車線へ移っていただきたい。

 居座り続けるクルマがいるために、5台以上そのクルマの後ろに連なっていたり、そのクルマがいるために一番左の走行車線や真ん中の走行車線を使って、追い越していくクルマをいまだに見かけるので……。音楽を聴いている人、家族や彼女との会話で気付かない人もいるかもしれないが、前方左右はもちろん、後方にも気を配ってほしいと思うのだ。

右ウインカーを出すのもいい手立てかと思ったが(xiaosan@Adobe Stock)

 記憶が定かではないが、昔は追い越し車線に居座り続けるクルマがいると、右ウインカーを出して走行車線に移るように促す行為が存在した。もっと昔は、右ウインカーはトラックが排気ブレーキ掛けているという合図で、それがランプで点灯するようになったのでなくなったと聞いている。

 いずれも法的なものは何もないがパッシングに比べればイラっとすることもないので、追い越し車線を居座り続ける前走車を追い越したい時の「前走車を追い越したい時の右ウインカー出し」がいいと思ったが、これもあおり行為に当たる可能性がある。

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