ここ数年のトヨタはまさに順風満帆状態だが、実は一代限りで消えたクルマも少なくない。消滅した理由は、お家事情、迷走、気合の空回りなどいろいろだが、その苦節を経たから現在のトヨタの隆盛があるのだ。今回はその中でも特に異質すぎたクルマ達を見ていこう。
※本稿は2024年6月のものです
文:永田恵一/写真:トヨタ
初出:『ベストカー』2024年7月26日号
■本家の高機動車は今も現役で活躍中のメガクルーザー
和製ハマー的な存在となる、陸上自衛隊向け高機動車の民生版。それだけに悪路走破のためのハイテクが満載で、そのわりに価格は約1000万円と意外に安かった。メガクルーザーは一代限りではあるが約6年間も販売されたことのほうが驚き!
■順風満帆に見えますが……意外にやっちゃってます
最近のトヨタを見ると、5兆円超えの営業利益(2023年度)、カーボンニュートラル実現に向けてのマルチパスウェイによる電動化、水素燃料、さらにはエンジン存続の準備、そして先鞭をつけたハイブリッドカーはいまだに世界最先端で品揃えもほぼ万全。
認証不正問題(「それほどのこと?」という意見も多い)以外、まさに盤石である。
しかし、振り返ってみると一代で絶版になったモデルが意外に多いのもトヨタの特徴である。まさに、“弘法も筆の誤り”といったところだろう。
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■トヨタ「一代限り」パターンのいろいろ
トヨタの一代で絶版になったモデルの事情を見ていくと、大きく4つに分けることができる。
ひとつ目は直接的か間接的かはともかく、キャラクターを受け継いだ後継車があるもの。幸いにもこのパターンが多いのは顧客を大事にするトヨタらしい。
ふたつ目が「ライバル車に対抗したけど、失敗」というもの。これに該当するのは「後出しなら滅多に負けない」というトヨタらしく、マークXジオ、グランドハイエースくらいだ。
3つ目は「新しいジャンルなどにチャレンジしたけど失敗」というもの。これはセラ、プログレ、iQなどが該当。このパターンに対しては、チャレンジを評価する層も多いだろう。保守的なイメージが強いトヨタだが、実はかなりアグレッシブでチャレンジングだったことの証でもある。
そして4つ目が「販売ディーラーの都合や希望によって登場したモデル」というもので、このパターンは実に多い。
どういうことかと言えば、かつてのマークII三兄弟を筆頭に「○○店で売れているモデルがあったら、××店でも欲しい」となるのは当然で、違いの程度はともかくとしてデザインを若干変更した兄弟車が加わることが多かった。
そういった兄弟車は売れなければ、不採算分子となるため短命なのも当然で、一代限りで終わったトヨタ車が意外に多いのは、これら兄弟車の多さによるものであることがわかる。
それだけにいかに大トヨタでも兄弟車を出す負担は大きく、2020年から原則全ディーラー全車種扱いとなり、それに伴いモデルが減ったのも真っ当に感じる。
■WiLLシリーズの志は高かった!!
トヨタは2000年代初め、実験的なクルマとして異業種コラボブランドWiLLを展開していた。最初のViはカボチャの馬車、第二弾のVSはステルス戦闘機をイメージした内外装で大失敗。しかし、最後のサイファは現代のコネクテッド機能につながるG-BOOKを搭載するなど、それなりに存在意義を持っていた。
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■一代限りで終わったレクサス車
レクサスは意地のようなものも含めた継続性も重要な高級ブランドだけに、日本展開開始から約20年が経っても一代で絶版というモデルは少ない。
まずIS Cは絶版が近かったSCの後継車を兼ねる意味も含め登場。絶版後は時間こそ空いたが、クラス違いのLCコンバーチブルが引き継いだ。
HSはトヨタ版のSAIほど大きな改良はなかったが、10年近く頑張ったことは評価できる。
CTは10年超えのモデルサイクルは百歩譲るとして、ここまで頑張っただけに、現行プリウスベースの直接的な後継車というのを見てみたかった感はある。
いずれにしてもレクサスは一代で絶版になっても、形態はともかく、何らかの後継車がある点は高級ブランドとしても評価できる。
■トヨタはGMが絡むと販売苦戦する!?
トヨタは以前、日米貿易摩擦緩和もありGM絡みのモデルを2台導入したが、両車とも一代で絶版に。
1台目のキャバリエは右ハンドル化はもちろん、ウインカーも右とし、価格も200万円以下とするなど、満を持して導入。しかし、同価格帯のトヨタ車含めた日本車にいろいろな意味で及ばず極度の販売不振。
2台目のヴォルツはNUMMI生産となる120系カローラベースのクロスオーバー。存在感が薄く低迷したが、SUV人気の今なら全然違う運命だったかも。
振り返ると、意外に多い一代限りのトヨタ車たちは楽しませてくれたのに加え、何らかの蓄積も残している。転んでもタダでは起きないのがトヨタらしい。
今後高効率化を図りトヨタの一代限りで終わるクルマは減るに違いないが、チャレンジし続ける姿は失わないでもらいたい。
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