2013年の本誌・ランキング企画をプレイバック。今回は、SUV・クロスオーバーをランキング! 5人の選考委員が、エントリーされた23車種を10点満点で採点。さらに各人の採点について、特に気になった点について訊いてみた!(本稿は「ベストカー」2013年6月10日号に掲載した記事の再録版となります)
選考委員:鈴木直也、国沢光宏、片岡英明、渡辺陽一郎、渡辺敏史
■このカテゴリー ここがポイント
SUV&クロスオーバーのカテゴリーは、悪路走破性の高い本格的なクロカン四駆から、スタンバイ方式の電子制御式4WDを採用した都会派SUV、乗用車ベースのクロスオーバーまで実にバリエーションが豊富。
今、このカテゴリーで最も熱いのはクリーンディーゼル搭載車のCX-5と、プラグインハイブリッド車のアウトランダーPHEVだろう。
CX-5のSKYACTIV-D(ディーゼル)、そしてアウトランダーのPHEVと、SUVに最新の低燃費技術が投入されていることがポイント。クリーンディーゼルの先駆車としてはX-トレイルやパジェロがすでに存在していたのだが、どれほどの違いがあるのか? また既存のSUVやクロスオーバーは否定されてしまうのか?
■片岡英明に訊いた!「アウトランダーPHEVに10点満点、ガソリン車だと評価が高い理由は?」
クロスオーバーSUVは、一気に世代交代が進んだ。ボクはアウトランダーPHEV、フォレスター、そしてCX-5に10点を付けた。
この3車はいずれも2012年に登場した、最新設計のクロスオーバーSUVである。アウトランダーPHEVは、今、もっとも進んだ設計のハイブリッド車である。フォレスターは廉価モデルのバランス感覚が素晴らしい。CX-5はクリーンディーゼルで異次元の走りを見せつけた。
この3車は走りの実力が高いだけでなく、燃費はいいし、衝突を回避する先進の安全運転支援システムも用意している。3車のなかでもっともトータル点数が高く、トップに輝いたのはアウトランダーPHEVだ。
SUVカテゴリーとして世界で初めてのPHVでエンジンを積んでいるが、かなりEVに近い性格である。通常はモーターだけで走り、エンジンは発電機として使うのだ。バッテリーを収めているため5人乗りになったが、それを補ってあまりある魅力を秘めている。
アウトランダーのガソリン車はパワーユニットや駆動方式など、メカニズムに目新しいもの、飛び道具はない。それが10位に沈み、伸び悩んだ理由だろう。
アウトランダーPHEVは、運転するたびに感動が沸き、発見がある。車両価格はアウトランダーよりかなり高い。だが優遇措置がある。長く乗ればコストパフォーマンスも群を抜いて高い。初期のトラブルが出たがこれも早急に対策されるはずだ。
■鈴木直也に訊いた!「CX-5とX-トレイルのディーゼル、評価の違いは? ガソリン車同士の比較では評価はどうなる?」
日本市場でディーゼル復権の口火を切ったのはX-トレイルだったが、価格とバリエーションに問題があったため、ブームを呼ぶにいたらず。結果的にCX-5に美味しいところを持っていかれちゃった感じだね。
X-トレイルもその後270万円台のエントリーモデルを追加するなどテコ入れをはかっているものの、今となってはSKYACTIVディーゼルのインパクトにはおよばない。
乗れば誰もがその力強いドライバビリティにビックリするし、しかもそれがエントリー価格258万円で買えると聞いて2度ビックリ。いまの国産SUV市場におけるCX-5の商品力は向かうところ敵なしだ。
X-トレイルディーゼルだってかなりいいクルマで、強力なトルク感とかスムーズな高回転性能とか、乗った時の満足感は充分に高い。
でも、いざそれをCX-5と直接比較してみると、残念ながらほとんどすべての部分でちょっと負けているんだよなぁ。
こういう風にいったん旗色が悪くなると、それをひっくり返すのは大変。アウトランダーPHEVみたいに、ナニか新しい“飛び道具”が欲しくなる。
個人的には、4WDの性能は磨けばCX-5よりもX‐トレイルのほうが光る可能性を感じるんで、よりオフロード志向の強いユーザーを呼び込む作戦がいいんじゃないかと思う。クルマのキャラクターもそういう方向だしね。
■渡辺陽一郎に訊いた!「CX-5に7点、フォレスターに9点付けた理由は?」
CX-5はクリーンディーゼルターボが魅力で走行性能も高いが、野生的な「SUVらしさ」は乏しい。背の高いアテンザワゴンという雰囲気だ。全幅は1840mmに達して運転がしにくく、後席の座面は柔軟性に欠ける。
衝突回避の支援機能は、今のところ赤外線レーザーを使った市街地向け。時速30km以下だけで作動し、アテンザに比べて機能が古い。
その点、フォレスターは現行型で外観のSUVらしさが強まり、4WDには悪路対応のXモードも採用。全幅は1795mmに収まり、後席の座面も適度に柔軟だ。SUVでは床が低めで乗降性や居住性もよい。アイサイトは幅広い速度域に対応し、車間距離を自動制御するクルーズコントロールの機能も備わる。
運転感覚は、CX-5のクリーンディーゼルターボと違ってインパクトの強い駆動力は得られないが、低重心で操舵には軽快感が伴い、走行安定性は見劣りしない。
車両価格はCX-5のXD・Lパッケージが319万円。フォレスターでターボを搭載する2.0XTアイサイトが294万円弱。機能に対する価格は同等か、むしろCX-5が割安だが、車両全体のバランスを考えると軍配はフォレスターに挙がる。
■XVハイブリッドをどう見る?
いまさら「マイルドハイブリッド」が出てきても評価などできまい。試乗してみなければ最終的な結論は出せないものの、スペックからすればホンダのIMA式と同じ。厳しいと思う。
もちろん皆さんはどう考えるか知らないです。私は普通のXVをすすめておく。
いや、もっと正確に書けば、XVもベースになったインプレッサより乗り心地が硬く推奨していない(国沢光宏)。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。