2013年のランキング企画をプレイバック。今回は、特に輸入車ではボリュームゾーンになる、日欧米200万台までのプレミアムコンパクト&ミドルクラスハッチバックをランキング! 5人の選考委員が10点満点で採点、のち座談会を開催して最終的なランキングを決定。この座談会の様子をご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年6月10日号に掲載した記事の再録版となります)
選考委員:鈴木直也、国沢光宏、片岡英明、渡辺陽一郎、渡辺敏史
■空前絶後、ボルボがランキング特集で1位!
【鈴木直也(以下鈴木)】これさぁ、ボルボがこういったランキング特集でトップになるなんて空前絶後のことなんじゃないか!?
【片岡英明(以下片岡)】2位と4点差。ぶっちぎりのトップだからすごい!
【鈴木】V40はエコや安全性をはじめ、いま求められていることを過不足なく全部やってきているクルマで、かつ値段がめちゃリーズナブル。つまりまったくの王道なんだ。これは問答無用で評価せざるを得ない。
【国沢光宏(以下国沢)】値上げする前に買ったほうがいいよ。
【鈴木】ユーロ安の影響でね。
【国沢】すぐ買ったほうがいい。
【鈴木】自動ブレーキなどが付くセーフティーパッケージの無料キャンペーンも延長*してるしね。*当時
【国沢】ギェー! 期間中に、もういま買うしかないでしょ。
【ベストカー(以下BC)】このボルボV40とベンツAクラスは、発売したタイミングもクラスもほぼ同じなわけですが、Aクラスは3位で、V40とは6点差もついてます。比較するとどうでしょうか?
【渡辺敏史(以下敏史)】ユーティリティ重視のユーザーはBクラスがあるため、新型Aクラスはスポーティな方向に振っています。だから、僕の感覚でいうとVWシロッコに近いくらいのクルマです。
【国沢】Aクラスは自動ブレーキが付いてない時点で大いに不満。
【鈴木】そこはV40がダントツに強い。ベンツは299万円以下に価格を抑えるためにコストを削れるだけ削っているんじゃないかな。だから、見るからにコストを抑えている部分もあるけれど、乗ると不満はない。
【片岡】そうだね。不満はない。
【鈴木】ただ、AクラスのDCT(デュアルクラッチトランスミッション)はガンガン走っている時はいいんだけれど、渋滞時はナーバスなところがある。
【敏史】Bクラスもそうですね。何かドライな感じがする。
【鈴木】DCYの出来はVW系が一歩リードしてる。
【渡辺陽一郎(以下陽一郎)】Aクラスは価格を考えると確かによくできていますよ。全般的にいいけれど、じゃあ、ベンツを買う満足感がAクラスにあるかっていうと……。マーク見るとベンツなんだなと思うんだけどさ。
【鈴木】ま、確かに。でもオレ、Aクラスはいままで変なサンドイッチ構造フロアとかを採用していたのに、FFプラットフォームでここまでちゃんとしたシャシーを作ってきたベンツはすごいとは思った。
【国沢】でも直也さん、自動ブレーキが付いてないのはどう? V40はスモールオーバーラップの衝突安全にも対応している。
【鈴木】確かに、そこはボルボはやっぱりよくできている。
(ここで、鈴木氏はV40にプラス1点で満点評価。片岡氏はAクラスをマイナス1点にした。順位は変わらず。)
【国沢】だってAクラスの価格ならV40に20万円のセーフティパッケージが付けられるんだから、買うならどう考えたってV40でしょう。
【陽一郎】V40は乗り心地のバランスなんかはいいと思ったね。Aクラスはどこの国のクルマなんだかわからない。
【国沢】そのとおりだ。(笑)もういいかげんベンツ至上主義じゃダメ!
【BC】2位は国産のスイフトスポーツがランクインしましたね。
【鈴木】自動車評論家に人気があるね、スイフトは。
【敏史】でも、このセグメントで日本車を買うならこれしかない。
【鈴木】なんでコレしか上位に入れなかったのかねぇ。オーリスなんかゴルフに勝つといって登場したんだよ。
【国沢】そう、ゴルフを凌駕するとかいってた。でも見事に低い順位だね。(21位)
【鈴木】ベンチマークを立てて勝負に挑むなら、BMW3シリーズをベンチマークにしたキャデラックATSくらい力を入れろ! といいたい。そうじゃないなら、独自の価値観をしっかり提示しろと……。スイフトは偶然の産物なのかもしれない。
【BC】国沢さんはスイフトをどう評価してますか?
【国沢】約175万円と安いしね。悪い理由がないね。
【鈴木】この価格で乗って楽しめるという意味では、一番楽しい国産車だと思う。
【片岡】楽しさがわかりやすい。
【国沢】ただ、ちょっと味気ないね。官能評価は高くはない。
【渡辺】注目したいのはスイフトというベース車がいい点。ベースがダメだと、いくらスポーティに仕上げてもダメ。
【BC】VWゴルフはどうでしょう? ランキングでは皆さんが試乗しているゴルフVIの採点としましたが、対談ではタイミング的に新型ゴルフのVIIの話をしたいですね。新型は何点でしょうか?
【国沢】オレ9点。
【敏史】僕も9点。
【国沢】えっ、渡辺さん、新型より旧型のほうが点数高いの? それはどうして?
【鈴木】それは詳しく聞きたい。
【敏史】新型はすべてに渡って等しく完成度は上がっているんだけど、クルマ1台のパッケージはどうかというと旧型のほうに分があると思います。
【BC】つまり、まとまり感みたいな話ですね。
【敏史】実際、欧州でも新型ゴルフの立ち上がりの売れゆきはぜんぜんダメみたいですよ。
【BC】国沢さんは新型ゴルフをどう思いますか?
【国沢】最大で100kgといわれる軽量化ってすごいと思うよ。実用燃費もよくなっているし、自動ブレーキも付いている。ボルボに続いて高く評価します。
【BC】7位に入ったアウディA1ってどんなクルマですか?
【国沢】なんでアウディA1がこんなに上位になるんだ?
【陽一郎】A1スポーツバックがいいのはコンパクトで、そのわりには上質なクルマであること。日本車には意外とないんですよ。でも、7点は高すぎたかな、6点にする。
【片岡】そうだな。私も1点下げて7点にしよう。
【陽一郎】ただ、ゴルフとかでは大きすぎるという人で、ちょっとした買い物用などにいいクルマに乗りたいな、という人にちょうどいいポジションにあるクルマだと思います。
【BC】片岡さん、フォードフォーカス9点は高い評価ですね。
【片岡】新型は先代に比べて大幅によくなったので……。
【鈴木】フォードフォーカスって“いい人なんだけど結婚できない”みたいなクルマだよ。
【敏史】シャシーに関してはV40よりフォーカスのほうが上だと思いますよ。
【鈴木】“いい人”なんだよ……。
【国沢】でも価格293万円でしょ。ゴルフより高いって考えられないけどね。
【片岡】確かに50万円ほど高い。
【国沢】それに買っても下取り価格はよくないから、いいクルマだといってた自動車評論家にだまされたぁ! となる。
【BC】あれだけ話題になったup!が15位ですが、採点も敏史さん9点、陽一郎さん4点と評価がわかれましたね。
【敏史】シングルクラッチのATはデリケートなアクセル操作が必要だけど、これだけ芯がしっかりしたクルマを、約150万円からという価格で売られたら“参りました”という感じです。
【鈴木】すごくわかる。でもオレがあまり評価しないのは芯しかないから。芯しかないのがup!ならば、衣しかないのがワゴンR。素晴らしい衣だけど。
【陽一郎】うん、そうそう。
【鈴木】心情的にワゴンRを応援したい。日本人は芯より衣。
【陽一郎】いろんなモノを取り除いていった時にクルマの本質って残るわけですが、そこにup!のよさがあるのはわかる。ただ、これがVWだからってATを含めて、人にはちょっと薦められない。up!を買うなら実質的な価格差が25万円程度しかないポロのほうをお薦めします、という意味でup!の点数は辛くなっています。
【国沢】オーリスは新車のわりに順位が低いね。アピール不足だけどRSは希少なMTも設定しているし、もう少し評価されてもいいと思うけどね。
【陽一郎】オーリスは全体的に価格が高いんですよね。
【国沢】それなりに装備を付けるとオーリスはプリウスの価格とあまり変わらないから、プリウスのほうがいいとなる。
最終ランキングは画像ギャラリーにてご紹介。対談によって順位に変更があったのはアウディA1とフォードフォーカスで、どちらも13位にダウン。そして、このランキングでは何よりもボルボV40の圧勝ぶりに驚かされる結果となった。
* * *
【番外コラム】プリウスがエントリーしたら?
この200万円台までのプレミアムコンパクト&ハッチバックランキングのカテゴリーでは輸入車のほか、国産車のプレミアムスポーティグレードのコンパクト&ハッチバックをノミネートしているわけだが、今回の対談中にプリウスはこのカテゴリーに入らないの? という意見が挙がった。
ハイブリッド車はプレミアムモデルに位置付けられるという見解なのだが、プリウスは特別なスポーティモデルやプレミアムグレードの設定がないため、ノミネート車には入れていない。
もしプリウスをこのカテゴリーでノミネートした場合、その評価は意見の分かれるところだが、上位に間違いなくランキングされたと思われる。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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