本誌『ベストカー』の自動車国沢光宏氏による連載『クルマの達人になる』。毎回鋭い視点でクルマ界を斬る本連載から、車幅にまつわる考察をプレイバック。(本稿は「ベストカー」2013年7月10日号に掲載した記事の再録版となります)

文:国沢光宏/写真:マツダ、トヨタ、ホンダ、ほか

■世界的な車幅拡大の流れの中で

マツダ CX-5

 今や世界の流れはワイドボディ化である。

 今や大半のモデルが国際戦略車種となるマツダの場合、ライト級SUVであるCX-5の全幅を見ると1840mmと、同じカテゴリーに属するX-トレイルよりふた回りくらいワイド。

 新型アコードも1850mmで、ミドルクラスセダンのイメージなし。新型ゴルフなどCセグメントなのに1800mmあります。私が新型ゴルフを高く評価すると「そんな大きいクルマはゴルフといえるのか! 輸入車に甘い」。

 はたして車幅をどう考えたらいいか?

 “幅広嫌いだ君”の意見をツラツラ並べると筆頭は「対向車で来た時に迷惑」とか「駐車スペースが狭くなる」というもの。

 つまり「ワイドボディは人に迷惑を掛ける」という。至極正しいと思う。

 日本の駐車スペースってアメリカなどと比べれば狭い。私も大きいクルマの隣の駐車スペースを避ける傾向。軽自動車の隣なんか喜んで止めちゃいます。狭い道の向こうからハマーH2とかがやってきたら、やっぱしイヤだ。

 どのくらいの幅なら迷惑じゃないのか? こういった観点に立つなら「すべて軽自動車にしなさい」ということになる。

 今や軽自動車だって4人ぶんの居住スペースは充分。高速道路だって100km/h出せる。

 白ナンバーの車幅の車種はすべて贅沢品ということであります。

 5ナンバー派だって軽自動車ユーザーからすれば迷惑。しかも5ナンバーなら本当に迷惑をかけないで済むのか? ちなみにナンバープレートは車体の幅であり、ミラーの幅と違う。

 細い道を走る時でも、普通の人ならドアミラー展開状態のままだと思う。ということはドアミラー展開時の車幅でスレ違いの容易度が決まってくるワケ。

 どれどれ、とばかり5ナンバーのヴォクシーのドアミラー幅を調べてみたら2050mmだった。

 しかし、であります。

 車幅1750mmのプレマシーのドアミラー幅はヴォクシーより62mmも狭い1988mmしかないのだった。対向車として走ってきたなら、ヴォクシーのほうがジャマだ。

■日本で不便を感じない車幅はどれくらい?

トヨタ プリウスは車幅1745mm
ホンダ アコードは車幅1850mm

 こんな場合「適当な車幅を考え、コンセンサスとする」というのが文化のある国の正しい姿だと思う。

 興味深いことに1980年代末、トヨタは「日本で不便を感じない車幅はどのくらいか?」という大きい規模の調査を行なった。結果は「1750mmまでなら困らない」。この目安、案外当たっているかもしれない。

 その後、3ナンバー車の増加などにより少しずつ駐車スペースは広がってきた。トヨタも新型クラウンで1800mmとしている。

 BMW3シリーズも日本仕様だけ1800mmというスペック。日本のタワーパーキングって(マンションなどの立体式を含む)1800mmまでに制限しているケースが多いのだった。

 現在の日本だと使い勝手のよさを重視したクルマ選びをするなら、1800mm以下をひとつの目安とすべきなのかもしれません。

 ということで、車幅で1800mm、ドアミラー幅は2100mmくらいを上限にクルマ選びをしたらいいと思う。これ以上幅の広いクルマを買うなら、大柄な人が飛行機の普通席に座る時と同じく、周囲への配慮が必要。

全福とドアミラー幅の関係。なおここではプリウスは3代目を、ゴルフは7代目を、アコードは9代目を、アテンザは3代目を、CX-5は初代を指す

(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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