トヨタ車に搭載された名エンジンと言えば何を思い浮かべるだろうか? 4A-G? 2JZ? 確かに名機だが、今回は3Sエンジンに注目したい。なぜならば、これだけ幅広いフィールドで活躍し、そして長らくモータースポーツシーンでも現役であったエンジンは他に例が少ないからだ!

文:西川昇吾/写真:トヨタ、ベストカー編集部 ほか

■1984年に登場

トヨタ セリカ GT-FOUR

 3Sと一括りに言われることが多いが、スポーツモデルなどに搭載されたりモータースポーツシーンで活躍をしたりしたのは、ヤマハ製のヘッドを採用した3S-GE、もしくはそれにターボを採用した3S-GTEである。

 初登場は1984年のことであった。当時マイナーチェンジをした2代目カムリと2代目ビスタに搭載され、2.0L(1997cc)の自然吸気エンジンながら当時としては高性能な160PSを発生していた。

 そしてターボ仕様の3S-GTEは1986年に登場。185PSのハイパワーを誇ったこのユニットは、トヨタ初の4WDスポーツモデルであるセリカGT-FOURに搭載された。ここから様々なトヨタのスポーツモデルに搭載されるのだが、3S-GE系エンジンはモータースポーツシーンでの活躍も目立ったエンジンだったのだ。

■ラリーシーンでの活躍

 まずセリカにも搭載されたということもあり、ラリーシーンでの活躍は目立っていたところだ。

 セリカGT-FOURが実戦投入される前、WRCはグループB規定で競われており、狂気の時代とも言われていた。

 500PSを超えようとするエンジンをミドシップに搭載し、4輪を駆動する。これがグループB規定での勝利への方程式とも言えるパッケージであった。

 このパッケージを実現するため、トヨタは1980年代半ばに初代MR2ベースのグループBマシン「222D」を開発していた。

 ベースのMR2には4A-G系エンジンが搭載されていたが、これを3S-GEに換装。排気量を2053ccまで拡大し、ターボで武装して500PSを超えるとされる最高出力を誇った。しかし、グループB規定が安全を考慮し廃止されたため、222Dはお蔵入りになることになった。

 WRCがグループA規定によって競われることになり、1988年にようやく3S-GTEを搭載したセリカGT-FOURが実戦投入されることになった。その後、トヨタがワークスとして活動した1999年まで3S-GTEは使われ続けることとなった。その間に計3回のマニュファクチャリングチャンピオンを獲得している。

■サーキットでも活躍

JGTC トヨタ スープラ

 そしてオンロードのモータースポーツシーンでも活躍した。特にハイパワーが光っていたのはグループCの時代であった。

 1986年を戦ったトムス86Cはシーズン途中から3S-GE改のターボエンジンを搭載。ボアアップされたエンジンは2140ccとなっていて、680PSを発揮したそうだ。88Cにもなると760PSという小排気量ターボとは思えないほどの高出力を発生していた。

 そして、長らく活躍したのがSUPER GTの前身であるJGTCだ。トヨタは1994年から3S-Gターボを搭載したスープラで参戦。ノーマルでは6気筒を搭載するスープラに4気筒の3Sを搭載したのは、重量バランスなどのメリットを考えた結果だ。

 最終的に2002年までJGTCスープラに3Sは搭載され、1997年、2001年、2002年とチャンピオンを獲得した。

 そして、モータースポーツシーンの最後まで使用されたのがF3だ。1980年代中頃から使われ始め、2017年に旧規格のマシンで争われた全日本F3Nクラスで引退するまで使われた。ここまでモータースポーツシーンでの現役時代が長かったエンジンも他に少ないだろう。

 今日のトヨタのモータースポーツシーンでの活躍は、3Sエンジンが繋いできた歴史があるからこそと言えるのだ。

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