円滑で安全な交通を守るうえでは、ルールやマナーをを守ることは必要なこと。多くのドライバーが日ごろからルールやマナーを意識して運転していると思いますが、うっかりやってしまいがちなルール・マナー違反が「無灯火での走行」です。

文:吉川賢一/写真:Adobe Stock_taka/写真:Adobe Stock、写真AC

渋滞よりもドライバーをイライラさせる

 NEXCO東日本が実施した「高速道路のマナーに関するインターネット調査」によると、高速道路のドライブでもっともイライラする原因として、2人に1人が「マナー違反」と回答したそう。休日の高速道路といえば渋滞がネックとなりがちですが、マナー違反はそれよりも、ドライバーをイライラさせる要因となるようです。

 されるとイライラする行為としては「あおり運転」や「急な車線変更」「ハイビーム走行」「無理な追い越し」が挙げられたとのこと。その一方で、自分自身がうっかりやってしまった違反として挙げられていたのが「無灯火」でした。

無灯火走行はうっかりやってしまいがちなルール・マナー違反のひとつ(PHOTO:写真AC_うさみのん)

再点灯を忘れてしまうくらいなら、思いやりライトはしないほうが「思いやり」では??

 ご存じの通り、クルマのヘッドライトに関しては、2016年10月の保安基準改正によって、2020年4月以降に販売される新型車、および2021年10月以降の継続生産車に、クルマが周囲の明るさを検知して自動でヘッドライトの点灯・消灯をしてくれる「オートライト機能」の搭載が義務化されています。オートライト機能が搭載されているクルマでは、ヘッドライトのスイッチを「AUTO」にしてあれば、ドライバーが自らヘッドライトのスイッチをいれる必要はありません。

 2014年にJAFが実施したアンケート調査によると、「オートライトが装備されている」と回答したユーザーは全体の32.8%だったとのこと。そこから約10年が経過していることを考えれば、現在街中を走るクルマの多くには、オートライトが装備されていると考えられますが、まだまだ装備されていないクルマも走行しています。実際、夕暮れ時やトンネル内など、ほかのクルマのヘッドライトがついている状況でも、ヘッドライトを点灯させず無灯火で走行しているクルマを見かけることは、皆さんもあるでしょう。

 ただ、オートライトが装備されているクルマであっても、AUTO機能をOFFにしたまま動き出せてしまう車種もあり、そうしたクルマで、たとえば停車中にヘッドライトを消しておきたいとき、または信号待ちで対向車等の眩惑を避けるためにヘッドライトを消す「思いやりライト」のため、などでヘッドライトのスイッチをOFFにしてしまうと、無灯火のまま走り始めてしまう、ということに。

 ヘッドライトの点灯は、自分のためではなく、周囲のクルマのために点灯させるもの。信号待ちで対向車を眩惑させないようにというのはわかりますが、再点灯を忘れてしまうくらいなら、思いやりライトはしないほうが、相手を思いやることに繋がるのかもしれません。

 ちなみに、ヘッドライトの点灯は、道路交通法第52条において、「車両等は、夜間、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあっても、同様とする。」と規定されています。この「夜間」とは「日没時から日出時まで」。日没は、夏には19時ごろになる時期もありますが、冬の場合はそれよりもだいぶ早く、早いと16時半ごろにはすでに点灯させる義務があります。

2020年4月以降の新型車ではオートライトが義務化されているが、オートライトが装備されているクルマであっても、機能をOFFにしたまま動き出せてしまう車種も(PHOTO:写真AC_STUDIO_K)
ヘッドライトの点灯は、自分のためではなく、周囲のクルマのために点灯させるもの(PHOTO:Adobe Stock_ xiaosan)

交通事故による歩行者の死者数は、日没が始まる時間帯から急激に増加する

 昨今はトンネルのなかでも強い照明で明るく照らされ、都内などの街中では街灯やビルの照明などで夜間でも明るいことから、「つけなくてもいいか」と思うかもしれませんが、前述したように、ヘッドライトは、周囲に自車の存在を知らせるために点灯させるものです。特にドアミラーやバックミラーでは、無灯火のクルマは見えにくく、前方を走るクルマが自車を発見することが遅れてしまいがち。実際に、JAFによると、日没が始まる17時以降から、交通事故による歩行者の死者数は急激に増え始めるそうです。

 相手から見えないことで、相手が、自分が予想していない行動に出ることは考えられます。ヘッドライトは相手のため、ということを忘れず、トンネルに入る際や薄暮時が近づいてきたら、マニュアル操作のヘッドライトの場合はしっかりと点灯させ、オートヘッドライトの場合もAUTOの位置にあることを確認するようにしましょう。

JAFによると、日没が始まる17時以降から、交通事故による歩行者の死者数は急激に増え始めるとのこと。周囲の交通の安全のため、ヘッドライトは早めの点灯を意識しよう(PHOTO:Adobe Stock_toa555)

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