かつてはクラウンパトカーと双璧をなした存在のセドリックパトカー。パトファンにとっては、どこででも見かけられる珍しくもないパトカーだったが、近年、その数を大きく減らしてからは人気が急上昇! いまやスポーティカータイプのパトカーにも匹敵する注目を集めている。セドリックパトカーについてのディープな解説は書籍『セドリックパトカー スーパーバイブル』を参照してもらうとして、今回は、山梨県警で現役だった最後の1台が8月26日で廃車回送となった引退直前の様子をレポートしよう。

『セドリックパトカー スーパーバイブル』はこちら

文・写真/有村拓真

■全国からパトカーマニアが大集結

 2024年7月中旬、山梨県警公式Xのポストで「来月で廃車予定のセドリックも車両点検完了です!」という投稿があった。この一文で全国のパトカーマニアが反応、連日撮影に関する問い合わせがあったという。

 さらに8月に入り公式Xでは「セドリックを見学希望の場合は8月16日までに事前連絡ください」とも案内。その盛況ぶりがうかがえる状況に。実際に、担当者に話をうかがうと「北海道から九州地方など、とにかくあちこちから連日撮影に来られています」とのことだった。セド人気恐るべし!

イベント会場入りする際や帰署する際はわざわざ撮影スポットをチョイスして走行してくれるサービスぶり

 山梨県警の公式Xではセドリックパトカーを「北杜署のインフルエンサー」としており、まさにその通りの注目度の高さだった。そして、インフルエンサーの名に恥じないように、署員からも大サービス。撮影の場面では、赤色灯を点灯したり、いい写真がとれるようにライトを点灯しハンドルを切ったり、とファンの数々のリクエスにも柔軟に対応していた。筆者が取材に訪れた日も既に5名のファンが撮影や担当者と雑談を楽しんでいた。

 それにしても警察署で大手を振ってパトカーの撮影ができるとは! 昭和や平成初期の時代ではとうてい考えられなかったことである。

■良好なコンディションなのに残念

 さて今回引退する北杜署のセドリックパトカーだが、その登録は1998年8月、県費で導入された車両だ。導入当初は交通機動隊で活躍しており、県内の幹線道路で取り締まり活動などに従事していたという。そして2014年に北杜警察署へ異動となり、現在に至る。

 筆者が撮影した時点では、走行距離は10万キロに達しておらず、コンディションも良好だったが、無線機やアンテナは廃車に向けて取り外されていた。

 北杜警察署では交通安全啓発イベントとして引退直前の8月初旬から中旬の週末に県内外から観光客が多く集まる清里エリアの観光スポットを中心にセドリックパトカーを展示した。古いパトカーに、子どもよりもお父さんが大興奮の家族連れがいたり、子ども達も「見たことのない形のパトカーがいる。お巡りさんになりたい」と嬉しそうに話したりしていた。

清里のイベント会場では老若男女問わず多くの人がセドリックパトカーに興味津々な様子だった

 県警の担当者は「セドリックパトカーはコンディション良好で引退させるには惜しいが、時代の流れもあり仕方のないこと。最期にこのような注目を浴びることができたことは良かった」と話す。セドリックパトカーはマニアの心をつかんだだけではなく、警察活動への理解の促進や警察官を目指す人のきっかけ作りにもなったようだ。

 これでまた1台、貴重なセドリックパトカーが廃車になった。セドリックパトカーのかつての勇姿などは『セドリックパトカー スーパーバイブル』を参照してもらいたい。

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