「エンジン車は販売禁止になる?」などと言われていたが、実際はICE(内燃機関)とEVは共存することになりそうだ。ならば今しばらく素敵なエンジン車を楽しもう。というわけで、ユニットごとに今買いたいクルマを吟味してみる。ここでは、トヨタ、レクサス、日産の3社を見ていこう。
※本稿は2024年7月のものです
文:伊達軍曹/写真:トヨタ、レクサス、日産
初出:『ベストカー』2024年8月10日号
■内燃機関はなくならない! しかし……
2021年あたりには、「近い将来、ICE(内燃機関)を使用するクルマは確実に販売が禁止される!」というような空気が世間に蔓延していた。
だが実際は、そんなことにはならなかった。
いやもちろん、今後はEV比率が高まっていくのだろう。しかし環境問題におけるICEの意外な(?)優秀性や、EVが決して唯一の完全無欠な正解ではないこともわかってきた今、ICEの存在感は今まで以上に増してきている。
とはいえ今後は内燃機関の役割も変わり、「発電専用」的なポジショニングになることも考えられる。つまり「魅力的なエンジン」を存分に楽しめるのは、この数年間がラストチャンスに近いかもしれないのだ。
だからこそ今、魅力的な内燃機関の数々と、それを搭載する素敵なクルマたちについて考えてみたい。
■ステキなやつを今買えば今後10年は堪能できる!
まずは現行型新車に搭載されているICEユニットから考えてみよう。
ひと昔前はガンガンにガソリンと空気を燃やしながら、高回転域まで美声とともに一気呵成に吹け上がる超快感エンジンも多かった。だがその後は時代の要請もあって、ガソリンエンジンの特性もエコな方向に、あえて悪く言うなら「つまらない方向」へとシフトしていった。
だがそんな時代にあっても、まだ一部には「ゴキゲンなエンジン」は存在し、そして現行型新車に搭載され続けている。そんなゴキゲンな一台を今のタイミングで購入しておけば、今後10年は、人生における素晴らしい時間を過ごすことができるだろう。
■LEXUS 2UR-GSE(主な搭載車:レクサス IS500“F SPORT Performance”、レクサス LC、レクサス RC F)
トヨタとヤマハが共同開発した究極の大排気量自然吸気V8ユニット。圧倒的な出力性能と官能性、そして時代に合った環境性能を達成すべく、最新の直噴システムと吸排VVT(吸気側は電気駆動)、そのほか数多くの高出力・高回転化技術が惜しみなく投入されている。
最高出力の発生回転数は7000rpm以上で、高回転化に対応するため、排気バルブには軽量なチタン製が採用されている。
最高出力481ps/7100rpmの2UR-GSE搭載。自然吸気V8特有の滋味深い特性と回転感覚が魅力で、高回転域ではきれいにツブがそろう。
■TOYOTA G16E-GTS(主な搭載車:トヨタ GRヤリス、トヨタ GRカローラ)
WRCのレギュレーションをもとに決定した1618ccという排気量から、3.5L・NA並みのパワーを叩き出す怪物ユニット。「3」という気筒数はダウンサイジングのためではなく、あくまでエンジン性能を最大化するためだった。
3気筒ゆえに各気筒の排気干渉が小さくなり、実戦で重要となる「中低速トルク」を高めることを可能とした、戦うためのエンジンだ。
直近のマイナーチェンジで最高出力が304psとなり、最大トルクも40.8kgmに増強。中低速域がさらに厚くなり、これまで以上に「小さなスーパーカー」と言える存在に。高性能8速ATも追加された。
GRヤリスと同じくG16E-GTSを搭載。2023年8月のマイチェンで、モータースポーツの知見を生かしたマニアックな各種改善を実施。よりダイレクト感とスタビリティ性能が向上している。
■BMW B58B30B(主な搭載車:トヨタ スープラ、BMW Z4)
BMWが開発した直6ターボエンジン。同社が「理論上最適」とする1気筒あたり500ccで、ボア×ストローク=82.0×94.6mmのロングストローク型。ツインスクロールターボで加給され、力強い加速を見せる。
BMW Z4と基本的なメカニズムを共有するFRクーペ。SZおよびSZ-Rが搭載するのはBMW製2L直4ターボである「B48」だが、RZは最高出力387psのB58B30B型3L直6ターボを搭載。
■NISSAN VR30DDTT(主な搭載車:日産 スカイライン400R、日産 フェアレディZ)
実に400ps以上という最高出力を、6400rpmという現代のV6ターボらしからぬ高回転域で発生するエンジン。
吸排気に連続可変バルブタイミングシステムを採用するが、レスポンスを重視してEGR(排ガス再循環)は採用していない。400Rではないスカイライン(GT系)に搭載される304ps仕様でも、充分なパンチ力を誇る。
405ps/48.4kgmの出力を発生するVR30DDTT型3L・V6ターボを搭載。400Rの動力性能はもちろん強烈だが、304ps版VR30DDTTを搭載するその他グレードも充分強烈だ。
ターボの回転速センサーなどがより進化して環境性能も向上したVR30DDTT型ユニットを搭載。現在、新車の注文が一時停止中なのが惜しい。
■NISSAN VR38DETT
クローズドデッキとシリンダーライナーレスのエンジンブロックを採用した珠玉のV6ターボ。高出力に対応するためVQ35HRのオープンデッキをクローズドデッキに改め、鉄系の合金をシリンダー内壁にプラズマ溶射して0.15mmの層を形成することで、シリンダーライナーに代わるものとしている。
1機のユニットは、ひとりの熟練職人「匠」の手によって、最後の工程まで丁寧に組み上げられる。
言わずと知れたVR38DETT搭載のジャパニーズスーパーカー。2007年12月の初登場時は最高出力480ps/6400rpmというスペックだったが、その後の17年間で細かな進化を続け、直近のベースグレードが搭載するVR38DETTは最高出力570ps/6800rpm。GT-R NISMOに至っては同600psが炸裂する。
■かなり高額で希少だけど……レクサス LFAの「1LR-GUE」も味わってみたい!
1LR-GUEはトヨタとヤマハが共同開発し、約2年間で500基のみ作られたスーパースポーツ用V10自然吸気ユニット。
ヘッドカバーはマグネシウム合金製で、バルブは吸排気ともにチタン合金。レッドゾーンは9000rpmから始まり、9500rpmで燃料カット。これを搭載するレクサスLFAの新車価格は3750万円だったが、現在のオークション相場は1億円以上だ。
最高出力560ps/8700rpmの4.8L・V10「1LR-GUE」を搭載するレクサス LFA。性能も音も最高としか言いようがないが、中古車相場も1億円超とスーパー。
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