2024年8月30日、トヨタ車のサブスクリプションサービスを展開するKINTOの小寺信也社長がオンライン会見を実施。サービス開始から5年が経過した成果と、今後の展開を集まったメディアに説明した。今後「クルマの持ち方」が変わってゆくなかで、KINTOのサービスがますます重要になっていきそうだ。
文:ベストカーWeb編集部/画像:KINTO
■「アップグレード」とSDVの可能性
日進月歩の自動車界において、クルマの「買い方」や「持ち方」はここ50年ほど進化していない。販売店に行って、試乗して、契約して、一括なら代金を支払い、納車されて、愛車をカスタマイズしたければ用品ショップへ行き、乗り換え時に下取りへ出す。
全国津々浦々に張り巡らされたディーラー網と強力な営業販売力があればこそ成立している仕組みだが、そんななか、「新しいクルマの持ち方」として、サブスクリプションサービスを引っ提げてKINTOが登場した。
KINTOの最大の特徴は、もちろん「月々(購入するよりは)の支払いが安価」というところにある。そのうえで、「所有する」という形式ではなく「使う」というかたちで乗り続けることで維持費は安く抑えられ、納車待ち期間が短縮でき、Web上で契約を完結できる(販売店に行って半日かけて値引き交渉する必要がない)。
さらにKINTOは「モビリティのプラットフォーム」を掲げており、アップグレードを含む「コネクテッド」に力を入れている。
これまで新車購入時にグレードやオプションを選んだら装備を追加するのは難しかったが、KINTOは購入後も継続的に「アップグレード」を選ぶことができる。
この5年間でKINTO契約は約12万5000件とのこと。トヨタ車の年間販売台数を考えるとまだ「選択肢のひとつ」としか言えないが、若年層に支持を受けており(小寺社長によると20-30代のユーザーが40%以上で、これは全トヨタユーザーの2倍程度の比率とのこと)、つまり伸びしろがデカい。
KINTOの伸びしろといえば、SDV(ソフトウェア・ディバインド・ビークル)への対応を考えると、このサブスクの仕組みが最適になる可能性が高いところもポイント。KINTOはすでに開始している「ハードウェア・アップデート」に加えて、「ソフトウェア・アップデート」を、プリウスUグレードを対象に2025年頃に提供する予定だという。
また、KINTOは、現在乗っているクルマから「T-Connect」で運転データを収集・分析し、安全やエコな運転につながるポイントをアプリでアドバイスする「コネクティッドドライブトレーナー(CDT)」を2023年2月にプリウスUグレードから始め、ヤリス・ヤリスクロスのUグレードに展開している。この機能を2024年内にバージョンアップさせ、各車の運転データに基づいた従来のアドバイスに加え、トヨタの中で高度な運転指導技能を持つドライバーのデータとの比較によって、正確なライン取りや細かなふらつきを抑える走行など、ドライバーの運転技能の向上に資するよう、既存の「トレーニング機能」を拡充するという。
そのうえで、各ユーザーおよび各車の運転データをブロックチェーンに積み上げていくことで、将来的には車両保険のデータや下取り価格への反映に使えるよう整備することも、視野に入れて開発を進めているとのこと。
クルマの進化に、いよいよ「持ち方」も追いついてきた。KINTOの決算を見るとこれまでの5年は(サービス認知のため広告宣伝費を使ったりシステム構築に大量の費用がかかったため)赤字計上であったが、今期は黒字が見えているという。
ここからの5年、KINTOと、KINTOが提案する「新しい持ち方」が飛躍するかもしれない。楽しみに待ちたい。
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