デュカトをベースにしたナッツRVの新作キャンピングカー「ゼニア」(筆者撮影)

依然として人気が高いキャンピングカーのなかでも、近年、とくに注目されているのがイタリアのフィアットが製造する商用バン「デュカト(DUCATO)」をベースとした高級モデルだ。

全長5m超え、全幅も2m以上ある大柄な車体による広々とした室内や、高い走行安定性などを持つのがデュカト。従来、欧州などでは、キャンピングカーのベース車両としても大きな支持を受けているが、日本にも2022年12月に正規導入を開始。2023年からは、このモデルを使った国産キャンパーも続々と登場しており、好調なセールスを記録していると聞く。

キャンピングカーの一大見本市「ジャパンキャンピングカーショー2024(2024年2月2~5日、千葉県・幕張メッセ)」では、そんなデュカトをベースとする国産キャンピングカーの新型モデルを、有名メーカー各社が一堂に展示した。

中でも、ここでは、ナッツRV(福岡県北九州市)が出品した「ゼニア(ZEGNIA)」、トイファクトリー(岐阜県可児市)の「ダヴィンチ ルッソ6.0(DA VINCI Lusso 6.0)」、ホワイトハウスキャンパー(愛知県名古屋市)の「トリノ(TORINO)」といった注目モデルを紹介しよう。

キャンピングカーのベース車「デュカト」とは

現在、国内に導入されているデュカトには、標準ボディ仕様のL2H2(全長5410mm×全幅2050mm×全高2525mm、ホイールベース3450mm)、ロングホイールベース仕様のL3H2(全長5995mm×全幅2050mm×全高2525mm、ホイールベース4035mm)、ロングホイールベース・ハイルーフ仕様のL3H3(全長5995mm×全幅2050mm×全高2765mm、ホイールベース4035mm)といった3タイプがある。

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従来、デュカトの国産キャンピングカーには、標準ボディのL2H2をベースとしたモデルも多かったが、今回紹介する新型3モデルは、いずれもL3H2がベース。標準ボディと比べ全長が585mm長いぶん、より広い室内を持つことで、さらに豪華で使い勝手のいい装備を実現していることが特徴だ。また、いずれも、外観をほぼノーマルのままにしたバンコン(バンコンバージョン)と呼ばれるタイプで、ボディサイズも、ベースとなったL3H2とほぼ同じだ。

ナッツRV:ゼニア

ゼニア タイプTの外観(筆者撮影)

まず、ナッツRVが出展したゼニア。同社が製作するデュカト・ベースのキャンピングカーには、2023年に発表した「フォルトナ(FORTUNA)」というモデルもあるが、こちらはベース車が前述した標準ボディ車。新型は、より全長が長いロングホイールベース車を使っており、さらにラグジュアリー感や使い勝手のよさを加味している。

ゼニアは、室内レイアウトによって「タイプT」「タイプL」「タイプTL」といった3種類をラインナップする。まず、タイプTは、前向きのセカンドシートと、室内後方にツインベッドを装備。シャワーなどを使えるマルチルームも備えた仕様だ。

回転式の運転席と助手席を採用したゼニア タイプTの車内(筆者撮影)

乗車定員4名、就寝人数2名を確保するのがこのタイプ。車体左側にあるスライドドアを開けると、天井高1900mmを確保する広々とした室内が広がる(天井高は3タイプ共に同じ)。エントランス右には、ガラス蓋付きシンクを採用するキッチン。シンク用の家具には電子レンジや70Lの冷蔵庫も備えるほか、キッチン上方の家庭用エアコンも標準装備だ。また、通路を挟んで右側にあるセカンドシートの前にはテーブルも設定。停車時に運転席と助手席を後ろへ180度回転させれば、大人4名がくつろげるダイネット(リビング)となる。

ゼニア タイプTのダイネット部分(筆者撮影)

ダイネット後方にはマルチルーム、さらに後方には常設のベッドルームを配置。大人2名が就寝可能な横2列のツインベッドは、左側が長さ1930mm×幅790mm、右側が長さ1830mm×幅750mm。通常は通路となっている中央部にもマットを敷けば、簡単にキングサイズのベッドにすることができ、さらにゆったりとした空間を作り出せる。また、ベッド下には収納スペースも装備し、観音開きタイプのリアゲートを開ければ、長尺物などを積載することも可能だ。

ゼニア タイプTのベッド(筆者撮影)

ほかにも、このモデルには、停車時のエンジン停止中に家電製品などを使える400Ahリチウムイオン式サブバッテリー、室内を暖めるFFヒーターなども標準装備。マルチルーム内のシャワーキットやアルミホイールなどのオプションを装備した展示車の場合で、価格(税込み)は1435万8860円だ。

ゼニアのタイプLとタイプTLについて

ゼニア タイプLの外観(筆者撮影)

一方、ゼニアのタイプLも、タイプTと同様にキッチンやマルチルームを備えるが、ダイネットにはL字型ソファ、室内後方には長さ1400mm×幅1900mmの常設ダブルベッドを装備した仕様だ。乗車定員は5名、就寝定員2名+子供1名を確保する。

ゼニア タイプLのインテリア(筆者撮影)

また、後方の常設ベッドのかわりに、走行時に座席となる二の字シート仕様を選ぶことも可能だ。その場合、電動昇降ベッド(プルダウンベッド)を装着することができる。この仕様の場合は、ゼニア・シリーズで最大の乗車定員7名、就寝定員4名+子供1名となるため、家族でのクルマ旅にも最適だ。なお、価格(税込み)は、常設ダブルベッド仕様で、280Wクラスのソーラーチャージャー、シャワーキットなどのオプションが装備された展示車の場合で1435万8860円だ。

ゼニア タイプTLの外観(筆者撮影)

そして、ゼニアのタイプTL。マルチルームを装備しないぶん、ダイネットに4名掛けのベンチシートを配置することで、乗車定員6名を確保した仕様だ。室内後方には、タイプTと同じく常設のツインベッドも備え、大人2名の就寝が可能。また、中央部にマットを敷けば、就寝人数を3名に拡張することもできる。

ゼニア タイプTLのダイネットからベッドにかけてのインテリア(筆者撮影)

マルチルームがないため、シャワーなどの利用はできないが、そのかわりに、ロングソファを使ったダイネットはタイプTよりも広くて、高級感もたっぷりだ。また、キッチンや家庭用エアコン、電子レンジや70L冷蔵庫など、ほかのモデルと同様に、さまざまな家電製品も備えることで、快適な車中泊などが楽しめる。なお、このタイプの価格(税込み)は、アルミホイールやエントランス灯などのオプションを装備した展示車の場合で、1427万860円となっている。

ちなみに、これら3タイプは、いずれも独自の電装システム「エボライト」を搭載していることもポイント。移動などで走行している際に、サブバッテリーなどへの充電を高効率にできるシステムだ。これにより、ゼニアは、家庭用エアコンなどを長時間使うことが可能。サブバッテリーの充電状態さえ良好であれば、一晩中稼働させることもできる。とくに、かなりの猛暑となる夏場のキャンプや車中泊などでは、つねに室内温度を快適に保つことができるのも魅力だ。

トイファクトリー:ダヴィンチ ルッソ6.0

ダヴィンチ ルッソ6.0の外観(筆者撮影)

次は、トイファクトリーが発表したダヴィンチ ルッソ6.0。トヨタ「ハイエース」のキャンピングカー製造で知られる同社が、新しく展開する輸入車専門のサブブランド「ユーロトイ」からリリースする新型モデルだ。

2023年に発表した「ダヴィンチ6.0」の上級バージョンとして開発したのがダヴィンチ ルッソ6.0。ベースとなったダヴィンチ6.0とは、ロングホイールベース仕様のL3H2が持つ大柄な車体を活かし、上質かつ広々としたインテリアを持つハイエンドモデルだ。

ダヴィンチ ルッソ6.0のインテリア(筆者撮影)

ドイツの高級キャンピングカー・メーカーとして名高い「ハイマー(HYMER)」の元デザイナーと、同社デザイナーが共同で設計した室内は、家具などにイタリア製を使用。シート類には、欧州製キャンピングカーの多くに採用される最上級メーカー「アグチ(aguti)」製を装備し、快適で高級感溢れるクルマ旅を演出する。

また、セカンドシートの後方にはトイレや洗面台として活用できるマルチルーム、通路を挟んで反対側にはキッチンも装備。さらに、室内最後部には、大人2名がゆったりと横になれるベッドも常設。ベッド下には大容量の収納スペースも確保し、高い利便性も誇る。なお、乗車定員は4名、就寝人数は2名(オプションのポップアップルーフ仕様は4名)だ。

そんなダヴィンチ6.0をより「ラグジュアリー」な仕様としたのが、ダヴィンチ ルッソ6.0だ。主な特徴は、レザーシートのカラーにコニャックブラウンを採用したほか、背もたれや座面などにキルティングやステッチ加工なども施していること。また、キャビネットなどには、アルミ製ラインが入った天然木も採用するなどで、さらに豪華さを演出している。

ほかにも、壁などにはホワイトを基調としたカラーを採用。ブラックやグレーを基調とするダヴィンチ6.0の内装と比べ、より明るい雰囲気も醸し出す。加えて、外装には、ホワイトのボディ色と専用デカール、ゴールドのボルベット社製ホイール(オプション)なども装備し、室内の色調とのマッチングも図っている。

トイレなどに利用できるマルチルーム(筆者撮影)

なお、価格(税込み)は、標準装備をセットした仕様で1507万円。ダヴィンチ6.0では、オプション抜き標準装備仕様で価格(税込み)1474万円なので、33万円アップとなる。ちなみに、リチウムイオンサブバッテリーなどのオプションを装備した展示車の価格(税込み)は、1729万2220円だ。

ホワイトハウスキャンパー:トリノ

ホワイトハウスキャンパー「トリノ」の外観(筆者撮影)

最後に紹介するのは、ホワイトハウスキャンパーのトリノ。同社のデュカト製キャンピングカーには、従来、電動で大型ベッドを展開できる「ヴェローナ」などのモデルがある。一方、トリノは、独自のポップアップルーフ(オプション)を採用。乗車定員4名、就寝人数4名というヴェローナと同等のスペックを確保しつつも、より広く居心地のいい室内を演出した仕様だ。

ポップアップルーフとは、停車中に展開することで、就寝スペースとなるいわばテント的な装備のこと。走行中はルーフ内に収納できることで、安定した走行性能も発揮する。しかも、トリノのポップアップルーフは電動タイプで、室内にあるスイッチで操作可能。展開や収納といった作業を楽に行うことができる。

セカンドシートには、キャプテンシートを採用(筆者撮影)

一方、室内は、セカンドシートに、快適な座り心地を味わえるキャプテンシートを採用。左右の間隔を開けることで、運転席から室内後方へのウォークスルーも楽にできる。また、セカンドシート前にはテーブルを設置し、運転席と助手席を180度回転させることでダイネットにすることが可能。

ダイネット部分(筆者撮影)

さらに室内後方にもサードシートを設置し(運転中の着座は不可)、ダイネットにできるツインダイネット方式を採用する。なお、リアのダイネットはベッドにも展開できるため、ポップアップルーフと合わせて計4名の就寝が可能。室内最後方にはキッチンなども装備することで、利便性が高く、快適なクルマ旅を楽しめる。なお、価格(税込み)は、フロアマットや電動ポップアップルーフなどのオプションを備えた展示車の場合で、1693万9840円だ。

海外製モデルと真っ向勝負

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従来、デュカトをベースとするキャンピングカーは、前述のとおり、海外製の輸入車が主流だった。スロベニアのアドリア、ドイツのデスレフなど、日本にもさまざまなメーカーが手がけたモデルが今も販売されており、いずれもプレミアムなキャンピングカーとして多くの愛好家にとって憧れの存在となっている。

ここで紹介したような国産のデュカト・キャンピングカーが、そうした海外製モデルにどう対抗するのかも今後注目。日本ユーザーの嗜好や使い方をよく知る国産メーカーの技術力が、これから試されるときだといえる。

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